【企画特集】取り上げる話題やテーマにより企画し、複数回に分けて読み易くしました。今のところ国政や市政関連が中心ですが、今後はより領域を広げます。情報はinfo@press-isesaki.com
「3つの共生」軸に 輝き続けるまちづくり
臂伊勢崎市長に聞く―2022【3】(2022年4月5日)

 『いせ咲く。』は、伊勢崎市が掲げるキャッチコピー。市の花「ツツジ」をモチーフに、「伊勢崎」と「咲く」を組み合わせた造語で「もっと花咲ける街に」の思いを込めている。一方、市政運営のキーワードともいえるのが「3つの共生(世代間・地域間・SDGs)」だ。これらを軸としたまちづくりで、輝き続ける地方都市を目指すという、新年度の取り組みを聞いた。

 ― 子供から子育て世代、勤労者、高齢者まで、あらゆる世代が支えあう「世代間の共生」について、具体的な取り組みを教えて下さい。

 臂市長 新年度に条例制定で支援したいのが、高齢者の社会活動を応援する仕組み。いわば高齢者の「活躍・応援条例」だ。老人会の活動をより活発にし、まだまだ元気な人の地域活動も応援していく。免許返納の一人暮らしでも社会参加を促す、高齢者タクシー利用料金の助成要件も拡充する。教育・保育施設勤務の保育士さんなどが長期間、気兼ねなく産休を取得できる代替経費の助成など、子育て世代の支援環境も整えたい。地域住民や社会福祉協議会などの関係団体と協働し、地域のつながりや相互扶助の機能を高めていきたい。

 ― 市町村合併後の地域の一体感をどのように受け止め、「地域間の共生」を進めますか。

 臂市長 合併後17年を迎えるが、一部にまだひとつになりきれていない状況も見受けられる。支所機能を見直す中で、サービスの平準化、地域の独自性を考えていきたい。伊勢崎市公共施設等総合管理計画を改訂し、適切な資産マネジメントにより中長期的に市全域でバランスの取れた市民サービスを実施。地域間の共生を目指したい。また次の都市計画のマスタープランでは皆さんの理解をいただき、都市政策などを変えていくことも必要だと考えている。

 ― 「SDGs」は2030年までに、誰一人取り残さず、環境・経済・社会などあらゆる面で、より良い持続可能な社会を目指す17の国際開発目標です。市の具体的取り組みを教えて下さい。

 臂市長 環境面では行政組織の環境部を見直していく。女性・障害者雇用とその活躍など、市民の活躍の場をより整えていきたい。市職員が理解を深め、課題を解決するために「SDGsゲーム公認ファシリテーター」を養成する。外国籍の人にとって言葉の壁は高いので、それぞれの外国籍のキーパーソンの方に市の考え方を、広めてもらうような橋渡しも考えている。手話通訳の充実には担当職員養成で対応、という声もあるが、異動などで継続性がない。やはり社会福祉協議会などと連携して人材を確保することが望ましいと思う。民間については市内中小企業のSDGsビジネス推進に「ぐんまSDGsコーチングプログラム」事業費負担金事業も実施していく。

 ― 最後に2年目に向けての意気込みをお聞かせ下さい。

 臂市長 2人副市長体制も整えたこともあり、これから職員の皆さんとともに、本当の意味での地方自治に取り組みたい。伝えているのは「Transforming Our World」(私たちの世界を変革する)。職員は十分なスキルを持っており、やりたいことをもっと前面に出してほしい。職員から変わっていくことが、市民の意識の変化にもつながるはずだ。

 【取材メモ】市内病院、医師会、保健所などの医療連携に触れた時、特例債活用などのスケジュールもあり、やむを得なかったとしながらも「新保健センター計画時に、より幅広い議論ができていれば、医師会の先生方からは保健所も一緒に考えたら、という声が挙がっていたかもしれない」と残念がる。幅広い議論と長期的視野の重要性を改めて自戒した言葉にも受け取れた。
 取材の翌日、市経済界の重鎮から「昨日は市長のところ?」と聞かれた。記事掲載前なのにどうして?の疑問に「ブログで読んだから」と返ってきた。臂市長は市議時代の2011年12月11日の誕生記念日から「継続は力なり」と、日々の活動や感じた事を丹念に綴っている。愚直に記された言葉の一つひとつには人柄がにじみ出ている。市は広報誌や様々なSNSを通して市政情報を発信しているが、市長自らのこうした情報発信は、市民にとっては得難く、市政への親しみや関心を高めることにつながりそうだ。
              
                   1 2 3

臂市長ブログ  2021年伊勢崎市長インタビュー
【写真】群馬県伊勢崎保健福祉事務所。左後方建物は伊勢崎佐波医師会病院

市保健所設置に向け費用対効果を検証
臂伊勢崎市長に聞く―2022【2】(2022年3月31日)

 市保健所設置や伊勢崎織物組合所有の土地活用協定締結は、今後の保健行政や中心街の活性化に向けて、数年間をかける新たな取り組み。一方、同じ初でもネーミングライツは、新年度中の実施が見込まれる。「低い市民所得」の要因と改善策も聞いた。

 ― コロナ対策の最前線を担っている群馬県の伊勢崎保健福祉事務所ですが、市はより迅速な対応に向けて、自前の保健所設置に動いています。政令指定都市と中核市(前橋・高崎市が該当)以外の市で保健所を設置する場合、保健所政令市への移行が求められますが、その取り組み状況を教えて下さい。

 臂市長 これまでも山本一太知事をはじめ群馬県には意向は伝えている。新年度はさまざまな角度から、本市が保健所を設置することのメリットとデメリットを検証する。初めて保健所政令市となり、人口規模では伊勢崎市と同程度の神奈川県茅ヶ崎市など、全国に5つある保健所政令市へのアンケート調査を実施していく。そのうえで、あらためて取り組む意義があるか否かを議会や市民の皆さんに示したい。

 ※編集部注:茅ヶ崎市は神奈川県が郊外の衛生研究所内への保健所移転計画を機に、現在地の利便性などを考慮し、2017年4月に保健所政令市。県保健所の建物をそのまま借用、現在に至る。人口(3月1日現在)と一般会計当初予算(2022年度)を比較すると、茅ヶ崎市約24万人/約765億円、伊勢崎市約21万人/約777億円。

 ― 伊勢崎市織物協同組合が曲輪町に所有する土地(7900平方m)活用も新たな試み。市は昨年、組合と協定を結びましたが、どのような活用、事業手法を考えていますか。

 臂市長 組合の協力に感謝し、協定の目的でもある、中心市街地の活性化と持続的発展につながる活用を目指したい。組合の意向を十分に踏まえ、まちのにぎわいを創出し、本市の魅力を発信できる内容を盛り込みたい。複合施設を検討することになると思う。開発手法としてはPPPやPFIなど、官民連携による整備手法導入も視野に入れている。初めての試みとなるだけに我々も学ぶところは多いし、対外的にも市のイメージアップにつながるはず。そんな取り組みになればと思う。

※PPP(公民が連携して公共サービスを提供する枠組み)、PFI(公共施設の建設、維持管理、運営に民間資金とノウハウを活用する事業手法)。

 ― 公共施設の名前(愛称)に企業名や社名ブランドをつける「ネーミングライツ」。既に昨年、需要調査を終えていますが、実施までのスケジュールは。

 臂市長 新年度早々には応募企業の募集を始める予定。募集期間は2か月程度で、審査委員会の審査を経て、優先交渉権者を決める。命名権者との契約後は一定の周知期間を設け、実際の施設愛称の使用は、10月中までにはと考えている。本事業を新たな財源確保の手法として定着させ、本市と命名権者企業の事業効果を検証しながら、対象施設の追加などを考えていきたい。他自治体が先行する事業だが、本市では公共施設に一民間企業名を冠するのは、行政の公平性などから抵抗があったのかもしれない。

 ― 市民にとっては意外、驚愕の「低い市民所得」。就任前の臂市長の指摘で初めて知る市民も少なくありませんが、その要因と改善策を教えて下さい。※最新の2017年度の1人当たりの市町村民所得は、約286万円と群馬県内12市中最低(最高は太田市の約397万円)。

 臂市長 市内誘致企業に市外の方々が従事、3次産業への依存度の高さ、事業承継されずに高齢化、半事業・半年金の多いことなど、要因は複数ある。対策の一つが、雇用の創出と事業者が利用しやすい更なる支援制度、体制の充実。商工団体、金融機関と連携したビジネスマッチングイベントの市内開催など、市内大手と地元中小企業との関係も強化したい。地場野菜を活用した商品開発など、野菜のブランド化による価値向上の農業振興。高齢化や後継者不足で事業承継が難しい中小企業には、商工団体と連携・サポートしていく。市外在住で市内企業従事者には、移住・定住につながる施策を推進するなど、きめ細かく対応していきたい。
                 1 2 3

2021年伊勢崎市長インタビュー
【写真】新保健センターを建設する、大手町の福島病院跡地

「望ましい保健行政の在り方」に道筋
臂伊勢崎市長に聞く―2022【1】(2022年3月28日)

 就任2年目を迎えた臂泰雄伊勢崎市長。コロナ対策ではワクチン接種や経済支援対策に力を注ぐ一方、マニュフェスト実現や積年の諸課題に取り組んだ。就任早々、複数施設案だった新保健センター・子育て世代包括支援センター計画を、粘り腰で統合に巻き直した。市独自の保健所設置に向けても動き出し、今後の市保健行政の望ましい方向性を探っていく。組織改編も断行するなど、エンジン全開の1年を振り返り、2年目に向けての取り組みを聞いた。

 ― 市長就任から1年を経過しました。コロナ対策に多くの精力を割かざるを得なかった中で、市政運営を振り返っての感想を。

 臂市長 社会情勢の急激な変化、市民ニーズの多様化を肌で感じた1年だった。「建物が使えるから」と、当初は赤堀との2館体制だった新保健センター等計画は、県や国への申請手続き上、時間ギリギリだったが、統合でまとめることができた。職員の皆さんには大変な苦労を掛けたが、合併の理念、本来の望ましいあり方や組織へと舵を切ることができたと思う。その組織改編では農政部の独立、新年度に向けては副市長2人体制の他、細部にわたる組織改編を行った。一方、土地建物を民間に貸与し契約期間満了が迫っていた伊勢崎地方卸売市場は、あり方検討委員会の設置で方向性を導き出してもらう。中心街の活性化に向けて、駅に近い伊勢崎織物協同組合が所有する土地活用に関わる協定締結など、諸課題への道筋はつけることができた。

 ― 不本意だったことはありますか。

 臂市長 本来は市民一人ひとり、あるいは各種団体の皆さんの声をもっと聴き、意見交換ができる話し合いの機会を持ちたかった。残念だが、コロナ禍でことごとくダメになってしまった。今後は積極的に取り組める環境を整えたい。

 ― そのコロナ禍の現状と対策は。

 臂市長 市内では2月末までに7800人の陽性者を確認している。2回目を打ち終え6か月経過対象者のワクチン接種券は、4月中には全て届くよう手配している。言語が壁になり「どうしたらいいかわからない」という外国籍の皆さんには、キーパーソンの人に出演してもらい、多言語で解説した動画を昨年の4月から配信している。外国籍の人を雇用する経営者には、職場でワクチン接種を促してもらうよう理解を求めた。このため外国籍の市民の接種率は高い。例えば3月23日時点の3回目は、全市民14・1パーセントに対して、18歳以上で17パーセントと、3ポイント近く上回っている。

 ― コロナで疲弊した地域経済回復に向けて、市民生活や企業経営支援策は。

 臂市長 プレミアム率30パーセント上乗せコロナ対策認定店支援チケット発行、所得制限で国の子育て世帯給付事業対象外世帯への臨時特別給付、国や県の事業継続支援金受給事業者に上乗せ助成する、事業者支援給付金事業などを行った。基本的には国の対策に準じて実施してきた。
                 1 2 3

2021年伊勢崎市長インタビュー
【国政は立憲民主党が惨敗した衆院選総選挙が終わり、来夏には参院通常選挙が行われる。この間、伊勢崎市議選(4月24日投開票)を控えている。そこで市政の現状について伊勢崎市議会の正副議長に、それぞれの目を通した考え方、取り組みを聞いた。2回目は吉山勇議長】

 「工業団地造成に民活、保育/介護/看護の人材確保に投資」

 議長として心がけているのは「長年にわたって積み上げられた先例を踏まえた議会運営」。時には疑問に思う前例のない事態に、その経緯を調べて改善するなど柔軟に対応してきた。出産を控える議員の出産前後の休業規定はそのひとつ。昨年策定した新型コロナウィルス感染症に対する市議会対応マニュアル。「現実に発生して分かることもある」として議員の感染報告を受けて改定も行った。

 「伊勢崎市議会に限らずほぼ全ての地方自治体において、その機能は不十分」と、二元代表制の現状を語る。市政運営の細かなルールは執行で作成し、各事業案件の是非は執行が提供する情報に基づいてチェックする仕組み。「議会が決めた市政運営のルールに則り、執行状況をチェックできる状態まで進化させたい」の理想は、限りなく高い壁に阻まれている。それでも「少なくとも議会にはその責任がある」と、言葉に自覚と自戒を込める。

 経営者らしい発想で期待を寄せるのは、民間企業の資金力と事業運営能力を活用する「民活」だ。税収増に向けた投資として、民間の工業団地造成や企業誘致、市民プール再建などに、その活用を提案する。人的投資として挙げたのは保育・介護・看護などの学生への市独自の奨学金制度の充実。「こうした人材の確保が困難を極め、早急な対応が必要」と訴える。

 高校卒業後に携わった家業の飲食店経営で、社会人としての経験不足を感じた19歳の時。バスを乗り継ぎ米国を一周する旅に出た。ロスを起点にメキシコ・アカプルコに抜ける45日間の旅の途中、ニューヨークに立ち寄った。摩天楼のビル群に立った時、1年後にはこの地で生活してみようと決めた。米国で語学学校にも通い、飲食店の出前注文の電話を受けながら英語を覚えた。3年と決めていた滞在は6年に及んだ。

 ニューヨークで刺激を受けたラテンジャズやサルサなどの新しい音楽文化。帰国後に地元の人に楽しんでもらおうと、自身経営のお店に毎月、東京から演奏家を呼でみたが、商売としては続かない。市議立候補の動機のひとつは「こうした音楽の楽しさを行政にも手伝ってもらい広めることができたら」。もっともいざその立場になると「他に対応すべきことが山ほどあり」、手つかず状態が今も続いている。(2021年11月28日)

                 【1】【2】

 【国政は立憲民主党が惨敗した衆院選総選挙が終わり、来夏には参院通常選挙が行われる。この間、伊勢崎市議選(4月24日投開票)を控えている。そこで市政の現状について伊勢崎市議会の正副議長に、それぞれの目を通した考え方、取り組みを聞いた。1回目は須永聡副議長】

「より開かれた議会改革に期待」市議会基本条例制定 

 議会運営の原則・責務や機能強化、災害時対応などを定めた市議会基本条例案が意見公募を経て、来年3月定例会に議員提出議案として上程される見通し。制定過程の意義と明文化による「より開かれた議会改革などへの取り組みの加速」に期待を寄せる。県内では既に制定自治体もあるが、市条例案は制定で終わらせず、選挙ごとの任期開始後に検証、見直し、市民への公表、改正と踏み込んでいる。

 使い道や透明性が求められる地方議会の政務活動費。領収書、視察等報告書、会計帳簿を会派ごとにホームページで公開し「交通費以外は1円まで領収書を添えて報告している」とその透明性を誇らしげに語る。一議員の上限額は月額3万5千円で、会派所属議員数に応じ、原則4半期ごとに交付される。旅費算定を定額から実費支給、前払いから後払いに変えたのは2017年度から。「年度当初は持ち出しが多くて」と、それなりの窮状に頭をかく。

 とはいえ市議会が他自治体先進地に後れをとっている部分も少なくない。また多くの地方議会に共通する、「執行が決めたことを承認しているだけの追認機関」的な市民の受け止め方を否定しない。議会開会や運営の自由度/一問一答による深い議論/政策立案/行政チェックなど、「行政と『真剣勝負』の関係をつくりたい」と意気込みを語る。加えて「議会は制度を変えられる」という「議会の存在意義」を市民に実感してもらう重要性も強調する。

「秘書時代に怒られたことは一度もない」と、14年間仕えた笹川堯元代議士の意外な一面を明かす。笹川氏を政治の師と仰ぎ、その信条「政治とは弱者のためにある」を自らにも課し、政務にあたっている。最初から政治家を志したわけではなかったが、薫陶を受けていつしか「地域の小さな声を拾う」という気持ちが芽生えていった。最後まで迷った就農への憧れは、立候補時に封印している。

 バックパッカーの間ではバイブル的存在の「深夜特急」(沢木耕太郎著)を、学生時代から愛読していた。ワーキング・ホリデーで人気のあるオーストラリアのケアンズ。大学卒業後の半年間は、大自然の中でキャンピングツアー助手や砂金堀を経験するなど青春を謳歌した。現在はコロナ禍もあり、旅に出られないストレスをメダカで癒している。10鉢の水槽の餌代はわずかで「あとは、ほとんどほったらかし状態」の手軽さも楽しんでいる。
(2021年11月17日)

                   【1】【2】

 次期衆院選(10月19日公示、31日投開票)で群馬2区から出馬する、堀越啓仁前衆院議員(立憲民主党)と元衆院議員の石関貴史氏(無所属)に、政策を中心に考え方を聞いた。井野俊郎前衆院議員(自民党)は「多忙の折」として取材ができなかった。2回目は前回の落選から立て直しを図り、固い政治信念のもとに無所属で挑む石関氏。

 「大都市・金持ち優先から地方重視・庶民優先」へ

― 政党からの出馬も検討していたと思いますが、今回の無所属出馬については。

石関 約4年間、複数の政党、政治勢力の方々から声をかけていただいた。落選からしばらくして「もったいない」から、と他選挙区での可能性を問われたこともあったが、生まれ育ったこの場所から出馬し続ける、の思いは今後も変わらない。様々なお話を検討してきたが、現時点では自らの政治信条と折り合いがつかず、不利は承知で無所属出馬に至った。

― 掲げている「保守政治の刷新」による政治改革について。

石関 自民・公明党政権に代わる責任政党を構築し、抜本的な行政改革・統治構造改革を推進する。大胆な地方分権移譲改革では、国の権限、財源、一部課税権、生活に関わる一部の法律制定権などの分権移譲を実現する。日本の歴史や伝統の尊重、格差是正など、公正な社会の実現だ。言い換えれば、大都市・金持ち優先から地方重視・庶民優先の政治の実現を目指したい。

 「20万円給付金 コロナ対策繰越30兆円などから」


― コロナ禍で困窮する国民一人ひとりに一律20万円の給付金を提言していますが、バラマキとの批判もあります。

石関 減税も否定はしないが、所得制限のない給付金が手続き上で即効性に勝る。財源はコロナ対策で組んだ30兆円の繰越予算を充てるなど、やる気さえあれば出来る事。お金と時間的に余裕のある一部利用者しか恩恵を受けないGO TO事業よりも、コロナ禍で生活に困窮している国民の支援を優先したい。富裕層はそれなりの税を負担しており、公平性は保たれている。

― コロナ禍で一度崩壊した医療体制の立て直しは。

石関 不足していると言われた医師や看護婦が、東京五輪では必要な人材を確保している。人的資源が足りている中で対応できないのは、医師会などの組織に問題があり、ここに手を付けて必要なら法改正も行うべきだ。まずは第6波に備えた病床の確保。それでも不足するなら野戦病院的な施設の整備も必要だ。

 「検証なき 財政破綻無しとするMMT理論は無責任」


― 1000兆円を越す借金国家でも自国通貨を自由に発行できる国は、財政破綻しないとする「MMT」理論。井野・堀越両候補は、肯定的に受け止めていますが。

石関 これは今のところ理論上の考え方に過ぎず、検証されているわけではない。必要なら政府のお金だからどんどん出せばいいとか、国民全体の資産がこれだけあるのだから国債発行はまだ大丈夫とする声も聞くが、国家や個人の生活を直撃する経済を語るうえで、政治家としては極めて無責任だと言わざるを得ない。

― 若者の政治への無関心をどのように受け止めていますか。

石関 日本では政治の仕組みや役割を教える機会がほとんどないことが起因していると思う。こうした学びの場を増やしていきたい。とはいえ、堅い話だけでは政治から離れてしまう。個人的には最近、若い人に政治への興味を持ってもらうように、動画投稿サイトのYoutubeに1分程度の政治の身近な話題の動画を順次配信している。ぜひ観て欲しい。

座談会
【写真】石関候補の立ち合い演説会で応援する鳩山由紀夫元総理(伊勢崎市内の選挙事務所前で10月23日撮影)

 信念と覚悟を持った政治人生

【横顔・取材メモ】「引かない 曲げない 諦めない」を政治信条とする、強気一辺倒だったかつての議員時代。初めての落選を経て「多少引くことは覚えた」と、少し角を丸くした。複数の企業顧問、コンサルタント業の傍ら、「次も必ず出ます」と伊勢崎駅南口には引き続き事務所を置き、年2回の後援会報発行、時に招かれての集会と日々の政治活動は続けていた。

 「バッジが無くなり離れていく人、変わらず応援してくれる人、折にふれて気に掛けてくれる人」。落選した政治家が味わう、悲喜こもごもの日々。今までは秘書任せで初めて知った、というパスモやスイカの使い方。ごく普通の金銭感覚を取り戻す日常生活の中で、自身を見つめ直し、学ぶことが出来た「充実の4年間」とも振り返った。

 ケネディ大統領がピューリツアー賞を受賞したベストセラー「プロファイル イン カレッジ」(邦題:勇気ある人々)。成功だけとは言い切れない信念を持って政治生活を送った人々に、自身の政治家人生を重ねる。保守刷新の理想を掲げての無所属出馬や「選挙は今回で終わるわけではない」の言葉に、政治家としての覚悟をのぞかせた。 

 学生時代の友人と年に1度の渓流釣りは、多忙な議員時代も時間をやりくりして出かけた。空いている時間は読書や映画鑑賞に充てる。心酔している小津安二郎監督作品では、代表作の「東京物語」(1953年公開)をベストに挙げる。大人向けアニメだが、子供たちと一緒に観ている明治末期の北海道・樺太を舞台にした金塊をめぐるサバイバルバトル漫画「ゴールデンカムイ」。「『鬼滅の刃』より食いつきがいい」と子供たちの反応に驚いている。(2021年10月17日)。

              【1】 【2】
 次期衆院選(10月19日公示、31日投開票)で群馬2区から出馬する、堀越啓仁前衆院議員(立憲民主党)と元衆院議員の石関貴史氏(無所属)に、政策を中心に考え方を聞いた。井野俊郎前衆院議員(自民党)は「多忙の折」として取材ができなかった。1回目は自らを「伴走型」とし、人に寄り添う政治スタイルが持ち味の堀越氏。 

 家庭医療制度の充実と予防医療に注力

― 自宅療養を余儀なくされ、死に至るコロナ感染者も出た医療崩壊の大きな要因と、今後のコロナ対策について。

堀越 日本の医療機関は公営30パーセント、民間70パーセント。コロナを封じ込めている国はこの逆だ。効率化だけを求めた地域医療機関の再編・統合などで日本の医療制度は崩壊し、コロナ禍対応で表面化した、ということだと思う。現制度のままの対策では医療費が増大するばかりだが、まずは病床の確保を急ぎたい。今後の大きな仕組みとしては、家庭医制度の充実が必要。疾病治療に診療報酬を払うのではなく、地域で病気がなくなったら診療報酬を支払うなど、予防医療に力を注ぐことが重要になってくる。

― コロナ禍で経済がますます疲弊、停滞しています。どのような対策が必要でしょうか。自国通貨を自由に発行できる国は財政破綻しないとする「MMT」理論についても所見を。

堀越 プライマリーバランスの均衡、財政規律は一旦凍結し、大胆な財政出動を行うべき。消費を促す給付と減税、とりわけ持続化給付や低所得者層を対象とした給付金は絶対に必要。党が提案している1000万円以下の所得者の所得税免除、消費税の5パーセント減税などで全ての人に恩恵が行き渡ることを実施したい。「MMT」理論については財務省のホームページにも書いてあるが、そういう雰囲気はない。私は割と支持しており、京大の藤井聡教授をお招きして何度も勉強会を開いている。

 生活安定に非正規労働者問題解決へ

― 以前から叫ばれ続けている少子高齢化問題は、未だに先が見通せません。

堀越 非正規労働者が50パーセントに届こうとしている労働行政を変えていかないと解決しない。生活が安定することで、結婚や子供を産もうと考える人は増えてくるはず。さらに国が出生や子育て、教育に、より予算を割くことが必要だと思う。労働力不足にはITなどテクノロジーを活用したい。

― 激しい米中対立の中、台湾を巡る緊張も高まっています。外交、防衛もこれまで以上の慎重な対応が求められます。憲法9条改正の是非についても所見を。

堀越 日米同盟の強化がさかんに叫ばれているが、これだけに頼る楽観論は避けたい。加えて緊張関係にある諸外国と外交のパイプを築くこと、それをより強固にすべきだ。憲法9条の個別的自衛権は認めるが、なし崩し的に決められた集団的自衛権には反対する。憲法9条の改正論議は必要だが、前提として国家権力の専制化や恣意的支配を防止・制限する立憲主義を理解し、政権を縛る鎖を強固にしないといけない。

 代替エネルギーに水力活用も 

― 脱炭素社会に向けて世界が一気に動き出しています。国は原発稼働を組み込んだエネルギー政策を進めていますが。

堀越 原発は基本的に即停止で、再稼働、ましてや新・増設はありえない。代替エネルギーの安定的供給としては、水力の可能性に期待している。機能を持たないダムの後付け工事による水力発電、小水力として農業用水も嵩上げ工事で対応が可能だ。河川法を改正し、治水・利水で水エネルギーの有効活用を推進したい。

― 選挙のたびに投票率の低さが目立つ伊勢崎市ですが、市民、とりわけ若者の政治への関心を高めるために何が必要でしょうか。

堀越 若者が政治から離れていくのではなく、政治が若者を遠ざけている面もある。潜在的な関心はあり、そこに我々がコミットできていないだけ。私の場合、日々さまざまな形の座談会を開き、これを積み重ねている。若い人が「楽しいから、面白いから行ってみよう」と次の集まりに、他の友人に声をかけてくれる。そんな連鎖で、政治をもっとカジュアルにしていきたい。
座談会
 【写真】玉村町内で県立女子大生が主催した「ごちゃまぜ座談会」(中央左が堀越議員)

 深夜のファミレスで仲間に背中押され政界へ 

 【横顔・取材メモ】 福祉医療現場で働く中で、周囲の環境が国の施策から置き去りにされているという危機感を覚え、野党統一候補擁立に向けた市民ネットワークをつくった。候補者が絞り切れない中、仲間と話し合う深夜のファミレスで、最終的に背中を押された。

「1日にほぼ3回は着替える」というのは、主催の他、招かれた座談会、高座、政治ラボなど、集まりの雰囲気に合わせるため。ほぼ週末はこうした集会で埋まり、ネクタイ姿は少ないという。介護士や保育士、障害児の母親など、とりわけ女性グループが多い。わかりやすく、同じ目線での語りかけが、集会の連鎖を呼んでいる。

 政治家タイプとして「その能力は決して高くない」と分析し、自らを「伴走型」と捉える。補強手段のひとつとして、コミュニティシンクタンクの確保も計画している。一方、バンドマンのキャラクターを活かした情報発信には長けている。インスタグラムのフォロワー16,000人は「政治家としては多いほう」と胸を張る。

 休日は子どもたちと近場のキャンプなどで過ごすアウトドア派。議員活動の合間の僅かな休憩は、バンド活動のためにとギターやウクレレの練習に忙しい。作曲活動では新曲が完成し、近くSNSなどに配信する。タイトルは「約束」。(2021年10月12日)

              【1】 【2】

【写真】庁外のワンストップサービスのひとつの拠点ともいえる、スマークいせさき内の「市民サービスセンターあずま」

世代間共生 各支援条例制定なども視野に
臂泰雄伊勢崎新市長に聞く―2021【4】


 多くの政策提言とともに、政治家として求められる政策理念や信条。「共に生きる」、「3つの共生」などを掲げて市政運営の基軸としている、臂市長の具体的な取り組みを聞いた。

― 関連手続き・サービスを一カ所の窓口や一回の手続きで一括して行える、行政のワンストップサービスを公約に掲げています。

 臂市長 出来るところから少しずつやっていこうと思っている。いろいろ取り組まなければならない中で、例えば相続や税金、さまざまな手続きなどが発生する葬儀の窓口などについては、ワンストップ化に向けて動いている。もう少し先になれば、市民の皆さんが役所に来ていただいた時に、一カ所で用事を済ませたり、どこでどのように手続きを行なえば良いかなど、説明対応できるような窓口にしていきたい。

 ― 「地域間」「世代間」「SDGs(持続可能な開発目標)」による“共生”を市政運営の理念に掲げています。それぞれの取り組みについて教えて下さい。

 臂市長 まず地域間の共生だが、伊勢崎の場合、行政区が市町村合併からほとんど変わっていない。それを単に適正規模に整えるということではなく、より統一感を持った形にしていく。地域からもっと積極的に市に関わってもらいたいし、一方で地域にもいろいろな事をしていただきたいので、そんな面からも見直していきたい。

 ― 残る2つの共生については。

 臂市長 高齢者の皆さんには、もっと社会に関り活躍してもらいたい。そのための高齢者支援の条例を議員提案してもらえないか、市議の皆さんに働きかけている。こうしたいくつかの世代に関わる条例制定などで、まずは世代間の共生を図っていきたい。SDGsについては女性や外国籍の市民など、多様性をより重視した取り組みを考えている。

 【取材メモ】インタビューは記者が事前に提出した質問に応える形で、具体的な市政運営について語ってもらった。臂市長は質問への回答となるメモ程度は手元に置いたが、目を落とすことはほとんどなく、質問には自らの言葉で丁寧に応えた。市長自身のワクチン接種など、事前に予定していない質問にも真摯にその経緯や対応を述べた。

 「次の世代へ引き継ぐまちづくり」を掲げる臂市長。その政策提案は、産業、教育、安全安心、都市整備、医療福祉、歴史文化、市外連携、行政運営の8政策140項目と多岐にわたり、市政の隅々に網をかけている。市長就任前から「4年で成果を」と覚悟を決めて臨んでいるが、コロナ禍が立ちはだかっている。それでもインタビューではいくつかの政策提言の後に「少しでも変わることに繋がれば」と変化への意欲を滲ませていた。

 取材日は5月31日の午後で、インタビュー終了後に来訪者の予定も入っており、時間はきっちり30分間。細井篤企画部長の他、広報課長・係長の3人がサポートで同席した。記者の時間配分の失敗で、共生の理念、取り組み、行政運営などは終了間際のほんの僅かな時間でたたみかけた。臂市長が語りつくせなかったことは多くあったとみられ、来年に持ち越しとなった。(2021年6月24日、廣瀬昭夫)
                 《 1 2 3 4 》

1…  3  4  5  6  7  8