【行政/議会】伊勢崎市政や群馬県政、市議会や県議会、選挙などの伊勢崎に係る?話題を取り上げ、まちづくりを中心に行政の多様な取り組を紹介していきます。情報はinfo@press-isesaki.com
店ごとにデザインを変えたお買い物ラリーの名刺サイズのノベルティカード(中央は表側)

商店主には懐疑的だった1か月間の長期企画 延べ平均1000人来店で大絶賛へ
伊勢崎市が人気漫画家あらゐけいいちさんの「日常」とコラボ(2024年11月8日)

 伊勢崎市が合併20周年記念の企画として9月21日〜10月20日まで開催した、伊勢崎商業高校出身の人気漫画家、あらゐけいいちさんの「日常」とのコラボイベント。市中心街の8店が参加したお買い物ラリーでは、各店に延べ1000人前後が来店するなど、具体的な賑わいが市の集計でわかった。協力店は企画について当初は懐疑的だったものの、本町通りの人の往来に加えて売り上げ増を実感し、終了後は驚きと絶賛に変わっていた。

茂木園内
OCHAVA茂木園内の喫茶コーナーでは若者が寛ぎ、歩道にはリュックを背負った通行人

 お買い物ラリーは税込500円以上(うち2店舗は別条件)の買い物や飲食で、あらゐさんの漫画が描かれた名刺サイズのノベルティカードのプレゼント企画。本町では赤石屋1065人、OCHAVA茂木園1315人、松露庵907人、船定屋733人。曲輪町の島田もんじやき店971人(もんじゃ180円以上)、大甘堂(焼きまんじゅう180円以上)1000人、いせさき明治館916人。大手町の親玉商店は1046人だった。ノベルティカードは店ごとにデザインが違うため、熱烈なファンは全枚数を求めて各店で買い物、飲食を楽しんだ。

         
 伊勢崎駅前インフォメーションセンターや境赤レンガ倉庫など、市内6カ所に設けたスタンプラリーでは最初、全部で1000枚の特典を用意したが、その後不足するとみて2回に分けて計2000枚を追加発注。期間中に2774人がラリーを完遂し、A5サイズの描きおろしイラストボードを受け取った。描きおろしイラストを使用したコラボグッズが一時的に品切れ状態となったのは、販売ブースに長蛇の列ができたスマーク伊勢崎(西小保方町)。280円以上の乗り物券購入などが条件のAutoMirai華蔵寺公園遊園地では期間中、ノベルティカードプレゼントを1917人が受け取った。

伊勢崎図書館
 複製原画(子供の右側)を展示した伊勢崎市図書館ロビーのスタンプラリーコーナー

 「日常」は超現実的で不条理な日々をシュールに描いたギャグ漫画。華蔵寺公園遊園地の大観覧車ひまわり、旧JR伊勢崎駅などが描かれている。モデルとなった風景をめぐる「聖地巡礼」でファンが全国から訪れていた。既に12年前、SNSなどで知り合ったファンが市内で落ち合うオフ会も開いている。コラボ企画については高橋宜隆市議が昨年、市議会の一般質問で提案。一方、市もふるさと納税寄付者の3万枚の礼状ハガキにあらゐさんの漫画カットを添えるなどで、その人気に手応えを感じていたという。

 商店街振興組合本町百店会の会長で茂木園の茂木政樹社長は「市からの案内では最初、『ファンが来たら(カードを)あげて下さい』程度のレクチャーだったのでどこか懐疑的だったが、イベントが始まるとものすごい人で本当にびっくりした。郡山や横浜など遠隔地からも集まり、しかも喜んで買い物をしていく。ファンには聖地でお金を落とすことが喜びだという事を聞いたが、その経済効果は大きい。もう大成功ですよ」と手離しで絶賛した。
JR伊勢崎駅前の選挙事務所で会見する石関氏

責任政党構築に向け無所属で自民党に代わる選択肢を
衆院選2区で元職 石関氏が出馬会見(2024年10月13日)

 衆院選で群馬2区から無所属で立候補する元職の石関貴史氏(52歳 伊勢崎市宗高町)が13日、JR伊勢崎駅前の選挙事務所で記者会見を開いた。立憲民主党の擁立断念などで実質的な「自民党政権の信任投票になる」ことを危惧。裏金・旧統一教会問題などの真相究明や政治改革に不誠実な自公民政権に代わる責任政党構築を視野に、政党出馬をギリギリまで模索し「考え抜いて無所属を決断。出ないという選択肢はなかった」と決意を語った。

 会見を行った選挙事務所2階からは駅周辺総合開発で整備途上の伊勢崎駅前が見渡せる。なじみの商店や通学区内だったことから多くの同級生も住んでいたが「整備されて景色が変わった一方、人がいなくなった」と郷愁を込めて語った。一方、タワーマンションを目にする都内と行き来する中、外国人を含めた富裕層の話題にもふれ、地域間・階層間の格差是正を訴えた。「分権改革」として、国の権限、財源、一部課税権、生活分野の法律制定権の地域・地方移譲も公約に掲げた。

 中間階層の活力を取り戻すため経済政策として子育て、教育、少子化対策、農家の個別補償など家族支援を強化し、勤労所得、家計所得の最大化を推進。上がり続ける税金や社会保険料を是正し、ガソリン代・電気代を補助金で支援する。消費税を一時的に引き下げ、この間の赤字は国債で賄うことで消費拡大など、生活者優先の経済政策を推進する。

 日米安保を基軸とする外交では、アジア諸国との多国間協調体制の構築を強調する。自らは覇権を求めず、他国の覇権を認めない「謙虚に、しかし毅然として発信する外交」を目指す。強気一辺倒だった、かつての議員時代の言動がなりをひそめた「謙虚に毅然として」の言葉は、現在の凝縮された政治信条にも読み取れた。落選後に離れていった支援者もいるが、変わらずの応援、政治の現状を憂い戻ってきた支援者、さらに新たな支援の話題には頬を緩めた。

 10月15日公示、27日投開票の短期決戦に加え、政党出馬をギリギリまで模索したため会見時点での選挙活動日程は未定。今後随時発表するという。ポスター掲示は16日12時以降に始める予定。SNSは前回も取り入れたユーチューブのショート動画で日々の選挙活動を配信。X(旧ツィーター)、ティックトック、インスタグラムも活用する。選挙対策本部長には伊勢崎東校空手部後輩の高橋宜隆伊勢崎市議、同幹事長に河原井始桐生市議、同支部長に田村幸一市議、同副幹事長に無所属で国政に出馬した共通体験を持つ森田修元市議が就いた。

【横顔】昨年はクマにも遭遇したという渓流釣り。静寂に包まれた深い山奥で、無心に釣り糸を垂れる時間が最高の癒しとなっている。「1日1本」のペースで鑑賞する映画は、3年前の選挙取材時はベストに小津安二郎監督の「東京物語」(1953年公開)を挙げたが、今回はジュゼッペ・トルナトーレ監督の「ニューシネマパラダイス」(1989年公開)を記者たちに薦めていた。目立ち始めた前髪の白髪には「あまり気にしていない。似合うという人もいる」としたが「時間的に余裕があれば(染めたい)」と迷うなど、この件では"優柔不断"な面をのぞかせた。

【略歴】1972年伊勢崎市柳原町生まれ、1990年県立伊勢崎東校卒業。94年早稲田大学卒業後、郵政省(現総務省)入省。99年伊勢崎市議、2003年群馬県議。2005年衆院議員、以後4期連続当選。


観客が沸いた大技のバックドロップ。「本町七夕イベント」の街頭プロレス

「市を元気にする」イベントに官民連携支援補助1000万円
5件想定50万円補助枠が半期9件450万円(2024年10月3日)

 伊勢崎市誕生20周年の官民連携事業支援補助金予算1000万円は、9月末の上半期で最大50万円枠9件、20万・10万円枠を含めて23件、638万8千円となった。半期で約450万円に達した50万円枠には既存事業の他、7月7日開催の街頭プロレスを興行した「本町七夕イベント」、中心商店街の和菓子の魅力を味わう「本町和菓子ストリート」など、趣向新たなイベントが登場している。市は引き続き、年度内に開催する市民団体の市活性化事業支援補助申請を受け付けている。

「本町七夕イベント」はコロナ渦以降に中止となった七夕祭りに変わるイベントとして、本町商店街の有志が企画した。本町かかあ駐車場や伊勢崎神社を会場に、子供縁日やマジックショー、キッズダンスなど多彩なイベントを開いた。その目玉が大仁田厚やダンプ松本がフ登場する街頭プロレスだ。リングサイドは有料だが、観客はその周りの立ち見でも迫力に満ちた試合を楽しんだ。

 10月27日に開催する「本町和菓子ストリート」の参加は、本町通り沿いなどで営業する赤石屋、伊勢屋、親玉本店、里美製菓店、舟定屋、松露庵の6店舗。出来立てのどら焼、街歩きに最適なミニサイズ上生菓子、可愛らしいお月見うさぎのお饅頭などの特別和菓子を「和菓子巡りチケット」(各店舗1枚の6店舗分で1500円)で提供する。伊勢崎銘仙を着て街を散策し、午後5時からは伊勢崎神社を会場にパーティーナイトを楽しむなど、非日常を体験するイベント。来年3月16日に2回目の開催を予定している。

 支援補助金は対象経費の3分の2以内とし、「市を元気に」(上限枠50万円5件程度)、「地域を元気に」(20万円10件程度)、「地域文化・芸術を守る」(10万円55件程度)を見込んでいた。50万円枠の申請が多いことから、市は予算内で柔軟に対応している。20万円・10万円枠はこれまでに各7件を受理。20万円枠では10月26日、あずま北小を会場に、周辺5地区有志が花火大会、10月31日は市第2体育館でレクダンス交流会(同愛好会主催)を開催する。
 議長として1年間、市内各所を訪れた。副議長としてコロナ禍を体験していただけに、その回復ぶりに「本当に良かった。飲み屋さんに友人も多いので」と素直に喜ぶ。一昨年制定の市議会基本条例に基づく、委員会を中心とした議員間討議、議案議決で賛否が分かれた場合の議員ごとの賛否公表などの取り組みも紹介。いせさきFMの議長取材依頼には、議員一人々々の紹介企画を提案した。6月中旬以降に順次放送される予定だ。

 就職を考えていた農業大学校卒業の20歳の時、父の和幸さん(93歳)の町議(旧境町)出馬で就農へ。農業従事の傍ら2006年からJA佐波伊勢崎の理事を3期務めるなど、地域の農政に深く関わってきた。この間、父は旧境町の町長を3期(1991年〜2003年)務めている。その任期を終えた11年後の2014年、境地区の代表の一人として58歳で初当選。議員を目指した背景を「農業問題と土地開発」と言い切る。

 農業人口の高齢化、後継者問題、農家支援など農業従事者の立場から、これまでの農政や農地開発の在り方に疑問を投げかけた。市は2025年開始の第3次総合計画策定に取り組んでいるが、各地区で一定区画の優良農地保全を呼び掛ける。都市計画区域の早期統合による「負の遺産を後世に残さない」均衡ある都市づくりを訴える。

 造成中の伊勢崎南部国領産業団地に、信越化学工業の半導体材料製造工場建設が発表された。「今は第一段階に過ぎない」と今後に期待する一方、地元の境共同トレーニングセンター跡地に計画中の産業団地についても現状に触れた。従来型の団地造成ではなく、希望する規模や条件を整えて造成するオーダーメード型を強く推す。中心街活性化には将来的な夢として、伊勢崎駅周辺への市役所庁舎移転も提唱している。

 合併20周年記念事業として、8月31日開催予定の本庄市、深谷市との3市連携利根川花火大会。かつて旧境町では3尺玉で人気を集めた利根川花火大会を開催していただけに、もろ手を挙げて喜ぶ。定期開催の困難さは理解の上で「市単独でも」と継続を訴える。「地域の仲間の苦しさ、喜び、やるせなさ、憤りをこれからも議員として代弁していく」と言葉に力をこめる。

 300坪の畑でミカン、フェイジョア、ポポ−、バナナ・・、野菜はキュウリ、ピーマン、トマトなど、多種多様な果樹、野菜を栽培。手持ちの農業機材・資材の活用に加え、多忙な時にはパートも雇ったりする、大規模な”家庭菜園”を楽しんでいる。議員として酒席に参加する時などはその場に合わせるが、自宅の晩酌はハイボールのみ。「一晩でボトル半分、いや3分の1程度かな」と、酒量の問いに答えた。(廣瀬昭夫)
インタビューを受ける臂市長

銘仙デザインコンテスト、多文化フェスタなど多彩に20周年事業
臂伊勢崎市長に聞く‐2024【2】(2024年4月5日)

 来年1月1日に新市誕生20周年を迎える伊勢崎市は、多彩な記念事業を計画している。臂市長は、こうした事業を通して、提唱している共生社会の実現も目指している。主だった記念事業の企画意図や概要を聞いた。

― 大正から昭和初期に全国生産量の半分を占めるなど、黄金期を経た伊勢崎銘仙の生産は、環境の著しい変化で終焉を迎えていますが、その存在は今なお市や市民にとって大きな誇りとなっています。「ISESAKI MEISEN Design Award」の狙いは。

 臂市長 伊勢崎銘仙が受け継いできた「染織(色彩・織物)の技術」と「趣向を凝らしたテキスタイル」の新たな可能性を見出すためのコンテストを通して、さらに斬新な色彩とデザインを次世代に継承していきたい。具体的には決まっていないが、優勝賞品は応募のデザインされた布製品を検討している。当然その場では無理なので来年のコンテスト時に用意するなど、継続的に連続性をもって実施できればと考えている。メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎(市文化会館)で12月開催を予定している。

― 本庄市、深谷市の3市連携利根川花火大会には昨年初めて実施した有料観覧席は。

 臂市長 市ラグビー場周辺河川敷を打上場所に8月31日(荒天時は9月1日)に実施する。観覧場所は利根川水辺プラザ公園や島村蚕のふるさと公園などを予定している。
昨年初実施の有料観覧席は2人席・4人席・6人席を用意したが、6人席が売れ残った。駐車場付きでなかったことも影響していたのでは。こうしたノウハウは蓄積していきたいが、3市の連携事業ではさまざまな調整もあり、今のところ考えていない。

― コンピューターゲームをスポーツゲーム化したeスポーツは、県をはじめ各自治体でも産業振興や地域活性化に取り入れ始めています。市が計画しているイベントや企画の狙いは。

 臂市長 メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎(市文化会館)で、来年2月に大会を予定している。また市内各所で年6回、体験会も開催する。このほかクラフト系ゲームによるデジタルまちづくりコンテストも実施する。運営に際してはeスポーツに関係する企業が市内にあれば、産業振興として地元企業育成につなげたい。市内各施設に若者から高齢者まで幅広い層が集い、楽しんでもらうことで、観光資源としても活用していきたい。

― 「ドリーム・サッカー」の具体的な開催内容は。

 臂市長 本市の選抜サッカーチームが、サッカー元日本代表のドリームチームと親善試合を行うほか、サッカー教室も開く。自治総合センターが実施する宝くじスポーツフェア開催事業を活用するため、観戦は無料招待。市の陸上競技場で来年3月に開催する。

― 市民、各種団体、企業などを対象に、企画事業の経費を一部補助する制度はこれまでにありましたが、20周年事業の「官民連携事業支援補助金」は。

 臂市長 全市的に取り組む大きなイベントから、伝統文化や芸能といった地域に根差した小さな活動まで、幅広い応援が今回の事業の特長だ。コロナ禍でお祭り、山車・屋台、芸能といった地域に伝わる伝統的な活動が失われつつあるとの声もあり、伝統活動の復活、伝承に活用してほしい。
事業は「市を元気に」(50万円を5件程度)、「地域を元気に」(20万円を10件程度)、「地域文化・芸術を守る」(10万円を55件程度)の3区分で、補助金(補助率は事業費の3分の2)を交付する。

― 多文化共生フェスタやスポーツ交流イベントについては。

 臂市長 日本語教室や外国人向け生活オリエンテーション、多文化理解講座、災害時外国人支援ボランティア研修会などを継続的に開いており、日常的に交流を深め、共生社会に向けた環境づくりに努めている。昨年初めて開催した多文化共生フェスタでは、各国のダンスや伝統衣装の披露、さらに食文化に触れるなど、多くの交流機会を得ることができたと思う。今年は20周年事業として、これまで未参加の団体などにも参加してもらえるよう広く呼び掛けていき、11月に伊勢崎市民プラザで開催する。
交流を深めるには食とスポーツの2つの要素は欠かせない。そこで今年はスポーツ教室も開催する。日本人のクラブチームのような形態は少ないようなので、企業を巻き込んで企業内スポーツチームなどの参加も促していく。これらフェスタやスポーツ交流イベントを通して、多文化共生社会の実現に向けたまちづくりに取り組んでいきたい。

【取材メモ】20周年事業以外で保健所政令市への取り組みも聞いた。調整・詳細を詰めている段階として具体的な話は出なかったが、「自分としては間違いなく、絶対に(自前の保健所は)あった方がいい」と、訴えるように漏れた言葉が印象に残った。
国政の自民党の政治資金パーティー問題には「国政でやるべき政治活動はしっかりやっていただいていると思うが、選挙となると特に地方では、後援会づくりをはじめとして人手も必要になる」と政治資金パーティーには理解を示した。ただ「収支は出せるように」と付け加えた。(終わり)
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能登半島地震の被災地で救助活動や土砂倒木除去を行った伊勢崎市消防本部隊員たち

防災対策や新市誕生20周年に注力 伊勢崎市の新年度事業
臂伊勢崎市長に聞く‐2024【1】(2024年3月29日)

 伊勢崎市は2024年度予算を「防災と共生による未来に続く地方都市」実現予算と謳っている。正月早々の能登半島地震は災害の恐ろしさを改めて浮き彫りにした。一方、来年1月1日には旧市と赤堀・東・境の市町村合併から20周年を迎える。県内一人口の多い外国人居住者や旧町村市民との一体感の醸成を、共生社会の実現でより確かなものにする節目の年にもなりそうだ。臂泰雄市長に防災と20周年・共生社会実現を中心に聞いた。

― 能登半島地震発生では甚大な被害が明らかになる中、市の被災地支援も多岐にわたりました。

 臂市長 地震の揺れを感じたのは、駅伝の応援を終えて自宅で年始客と話をしている最中だった。すぐ外に出て周囲も確認したが、市内ではさほど大きな被害はないとみて、被災地支援でできることを考えた。県からの要請を受けて緊急消防援助隊や伊勢崎市民病院の災害派遣医療チームDMATの出動があり、庁内では安心安全課を中心に情報収集、さまざまな要請に対応した。新潟県長岡市寺泊の高台にある伊勢崎市臨海学校からは当日、市の教育委員会経由で津波災害の避難民を受け入れるための緊急開所連絡が入った。

 ※編集部注 伊勢崎市消防本部は1日〜11日まで、一隊平均15人で4次隊、延べ59人を派遣。石川県輪島市内を中心に、倒壊した建物などで人命救助にあたった。伊勢崎市民病院のDMATは、1月4日〜7日まで医師1人、看護師2人、業務調整員2人計5名編成のチームが、石川県七尾市の能登総合病院で被災者のスクリーニングなどに従事した。上下水道局は1月30日〜3月19日まで3回に分けて職員延べ20人を派遣し、石川県輪島市で給水車による応急給水。安心安全課は石川県かほく市で住居被害認定調査。市社会福祉課で受け付けた義援金・救援金は8,879,490円(3月21日現在)。


救急稼働
被災地で応急給水に派遣された給水車と救急活動に派遣された市民病院のDMAT


― 伊勢崎市内では2014年2月の大雪、2019年10月に台風災害に見舞われています。市が新たに講じてきた災害対策は。

 臂市長 大雪災害以降は、いせさき情報メールに気象注意報・警報などで発令と同時に自動で登録者に送信する機能を追加している。さらに、いせさき情報メールと各種SNS(X、Facebook)を連動させるなど、システムのバージョンアップを図ってきた。
台風災害を教訓に避難所職員の増員、防災倉庫にある備蓄品の一部を避難所に分散配布なども行っている。避難所運営マニュアルは水災と震災の対応を分けるなど見直しを図った。

― 能登半島地震などから得られた、今後の防災対策などは。

 臂市長 能登半島地震では、災害関連死の方が少なくなかった。避難所での生活が難しい高齢者や障害者への支援は、十分な配慮が必要と再認識した。障害者に対応した施設はほとんどない中、こうした方々は体育館などでは避難所暮らしが困難で、保護者も連れて行きにくい状況。中には普段通い慣れているデーサービスに行く、という話も聞いている。当事者や保護者の皆さまの声をよく伺いながら、指定避難所に加えて特別養護老人ホームなど、民間のしっかりした福祉施設などとの協力協定締結も進めていきたい。

― その指定避難場所ですが、小学校の体育館空調設備の新設などが予定されています。

 臂市長 避難所の整備として重点的に取り組んでいく。2024年度は北・南・茂呂・三郷・宮郷・名和・豊受・北第2・広瀬・坂東・宮郷第2・境剛志・境東の13小学校で新設し、翌年度に残りの小学校を実施する。中学校は四ツ葉学園を含む全12校が既に工事を発注し、今夏には利用できる見通しだ。アイオーしんきん伊勢崎アリーナ(伊勢崎市民体育館)も新設する。また設備の更新は市図書館や障害者センター、殖蓮・赤堀・境東・境島村の4公民館を計画している。


― 災害時の情報発信の充実はどのように図っていますか。

 臂市長 総合防災マップは市のホームページでも公開しているが、新たにスマートフォーン向けWEB版を新年度中に作成、提供したい。災害時に現在地から近い避難所、周囲の河川のその時点の水位がわかるなど、災害に的確に対処できる情報を素早く、手軽に入手できるようにしていく。

 スマートフォーンを持たず、テレビ、ネット環境がない市民には、いせさきFMの割り込み放送の仕組みを利用し、災害発生時の市からの災害情報を速やかに届けたい。Jアラート(全国瞬時警報システム)の緊急地震速報や弾道ミサイル情報を受け、スイッチを切っていても自動でラジオが起動、災害情報を受信できる、FM自動起動ラジオの無償貸与を予算化した。避難行動要支援者名簿登録者を中心に2000台分を確保した。
 
 群馬県内で外国人居住者の多い伊勢崎市では、外国人に対しての情報発信も極めて重要だ。既存の総合防災マップに加えて、英語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語の4言語版を新たに作製し、関係各所に配布していく。

防災マップ
河川別浸水想定区域がわかる総合防災マップと4か国語の総合防災マップ

― 市民の防災意識を高めるための今後の取り組みは。

 臂市長 総合防災マップの解説動画を既にホームページに掲載している他、出前講座、災害図上訓練、避難所運営ゲームなどの開催で関心を高める取り組みを行ってきた。いせさき情報メール、SNSなどを通して引き続き防災意識の向上に努めていきたい。

 能登半島地震は昨年に続いて起きている。地震は時や地域を選ばず発生する、ということを前提に取り組む必要性を強く感じた。耐震などのハード面の整備とともに、高齢者などの社会的弱者をどのように助けるのかなど、日頃から近隣とのコミュニティーの重要性を訴えていきたい。(次回に続く)
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 コロナ禍で日常が戻り始める中、行政区や各団体の式典やイベントに議長として招かれた。「『開催していただき、ありがとうございます』。冒頭にこうした感謝の言葉を述べる機会が多かった」と議長一年を振り返る。市議会代表挨拶を重ねる中「それぞれに地域の色が出ている」と改めて気づかされた。加えて地域ごとの産業祭などでは、香しい食べ物の匂いの違いを再認識。挨拶ではそれらの地域の特色に触れ、会場を盛り上げた。

 市議会と議員の活動原則、市議会の機能強化などを明文化した市議会最高規範となる「伊勢崎市議会基本条例」(全9章27条)が昨年5月に施行された。運用開始から1年を迎えるが、制定にあたっては伊勢崎クラブ内で若手中心メンバーとして意見を交わし、その調整、集約に関わった。制定後は「やっと終わった」という達成感とともに、様々な考え方や意見のぶつかりあいは「楽しかった」と思い起こす。

 条例前文には臂泰雄市長も政策に掲げる「共生社会の推進」を盛り込み、「議論を尽くす・市民に開かれた・専門性のある議会」など目指して「チーム議会」で取り組むことを表明している。とはいえ「細部はまだ詰めきれていない部分もある」として「条例検証及び見直し」条項を設けた。今後運用を図る中で、条例理念の整合性を図りながら毎年見直していく。近くその会合を始めるという。

 市町村合併後の伊勢崎市議会初代議長(2015年)が叔父の新藤晄旦氏。「他の立候補者の選挙も手伝うなど身近に政治に触れる機会や市政に素朴な疑問を感じた」ことが立候補のきっかけだった。4期目のベテランとなった今では、決算特別委員長を務めたこともあり、予算案・決算は「安全安心、災害、医療、福祉、教育など、関心や気がかりなことは1円たりとも疎かにしない」姿勢で事業や数字をチェックしている。

 保育士として9年間、保育園に勤務していた。朝から夜8時近くまで常に子供と一緒だった。「座って靴下を履いていた子が、立って履けるようになるのは、その時しかわからない。そうした成長を見ている楽しさ、それを親に伝えて喜ぶ姿を見ることもうれしかった」。議員活動の傍ら時間が空くと、今でも副代表を務めている2か所の児童クラブに足を運び、子供たちの相手をする。多忙な時間の中、自分自身を癒す時間にもなっている。
 時折笑顔を交えてインタビューに答える臂市長

電子地域通貨が地域活性化の新たな価値創造ツールに
臂伊勢崎市長に聞く‐2023【3】(2023年4月13日)

 ― 5月8日以降、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられます。伊勢崎市として以後の方針は。

 臂市長 県の方向性もみながら、可能なものは5月8日を待たずに緩和する。制限などはなくなるが、感染状況に応じて公共施設での感染防止対策、市民の皆さまにも基本的な感染防止対策は引き続き呼び掛けていく。

 ― マニフェストに掲げていた保健所設置が可能となる「保健所政令市」へ、2026年4月移行を想定した検討結果を明らかにしています。この決断にはコロナ禍も影響しましたか。

 臂市長 市民の健康問題を考えた時、感染状況など、やはり直接情報を持っている方がより迅速な対応ができると感じた。運営や人材確保などさまざまな課題はあるが、コロナで自前の保健所設置の思いをより強くした。外国籍の住民との共生や関係性、商工団体など産業界との連携の重要性、行政情報の発信では広報の充実など、コロナ禍でより見えてきたことは多い。

 ― 同様にマニフェストで掲げた、高齢者の活躍を後押しするための基本理念を定めた「伊勢崎市高齢者が生き生きと活躍できる社会の実現の推進に関する条例」が4月1日から施行されました。

 臂市長 少子高齢化の進行と人口減少対策には、子育て支援に力を注ぐ一方、高齢者が地域の担い手の一人として活躍する環境づくり、世代間の共生が必要だと感じていた。就労、趣味や学び直し、ボランティア活動など、高齢者が生きがいを持ち、その希望と適性にあった活動に取り組む社会の実現が、問題解決策のひとつになるはずだ。老人クラブの活性化の他、市民や事業者、地域活動団体の皆様と連携・協力しながら、条例の基本理念の実現を図っていきたい。

 ― 導入を予定している電子地域通貨の名称選びを実施中(4月21日まで)ですが、仕組みや導入の狙いは。

 臂市長 スマートフォンのアプリやQRコード付きカードを利用して市内加盟店でポイントを使った支払いができる仕組み。今年度は従来の30%のプレミアム付商品券事業を電子地域通貨で実施する。発行総額はプレミアム分を含めて10億4000万円、加盟店は初年度500店を目標にしている。紙の商品券に比べて店の負担を大幅に減らし、利用者は1円単位の支払いにも使える。行政からの様々な給付事業手続きを迅速にし、行政や地域事業への参加、協力の際のポイント付与など、市民参加を促すことも期待できる。市民、事業者、行政にとって利便性の向上が図られ、新たな価値創造の可能性を秘めた魅力的なツールとなる。地域全体のDX(デジタル トランスフォーメーション※デジタル技術による社会の変革)推進のため、その基盤を整備していきたい。

 ― 行政のデジタル化推進にあたっては、全国的にマイナンバーカード普及が進んでいます。伊勢崎市の現状と今後の目標は。

 臂市長 本市のカード交付率は2月末時点で58・2%(全国63・5%)、申請率は69・11%(全国74・8%)。今年の1月に市民課にマイナンバーカード係を設置し、職員も増員するなど交付体制を強化している。本年度末時点の目標は交付率65%、翌年度末で70%としているが、前倒し達成で1日にも早く全国に追いつき、追い越せるようカード普及に取り組んでいる。

 ― 地球温暖化対策の一環として伊勢崎市は2035年度までに公用車で電気自動車30%、ハイブリッド車65%、プラグインハイブリッド車5%の切り替え目標を立てています。

 臂市長 本市は昨年12月、公用車への次世代自動車導入計画を策定した。導入を進めていくのは公用車308台のうち軽自動車が70%の215台、小型自動車が22%の67台、普通自動車が8%の26台を計画している。各メーカーの電気自動車販売がまだ少ないことから低燃費のハイブリッド車を先行して導入していく。今後、電気自動車の車種が増えてきた時は、次世代自動車の販売事情に応じて導入計画を見直していきたい。


【取材メモ】
 春の桜、夏の蓮などで地域の憩いの場として愛されている伊勢崎市境伊与久の「伊与久沼」。この魅力を内外に伝えようと発足した「伊与久沼有効活用の会」が、テレビ東京「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦スペシャル」に応募し、3月19日に放送された。
 生き物確保やごみ拾いに参加したのは地元のボランティアおよそ200人。MCの田村淳(ロンドンブーツ1号2号)さんが番組冒頭、ゴム長靴や作業服のボランティア集団の中に一人だけスーツ姿の臂市長を見つけ、いじってきた。
 臂市長がマスク越しにぼそぼそと答えたが、テレビではよく聞き取れなかったので取材時に確認した。その返答は「長靴は持ってきました」。もっとも撮影開始が30分遅れて次の予定が迫っていたため、求められても対応できなかったそうだ。時間が許せば律儀な臂市長のこと、参加者との一体感を醸成するゴミ拾いパフォーマンスを見せたのかもしれない。 

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臂伊勢崎市長に聞く(2022年)  臂伊勢崎市長に聞く(2021年)
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