【行政/議会】伊勢崎市政や群馬県政、市議会や県議会、選挙などの伊勢崎に係る?話題を取り上げ、まちづくりを中心に行政の多様な取り組を紹介していきます。情報はinfo@press-isesaki.com
「伊勢崎駅ピアノ」お披露目セレモニー。ラッコタワーのキーボード、真一ジェットさんが演奏(2022年7月16日伊勢崎駅南口駅前通路)

「まちなか宣言」ビジョン明確に駅南口活性化
臂伊勢崎市長に聞く‐2023【2】(2023年4月5日)


 官民連携組織「まちなか活性化支援会議」が策定した「まちなか宣言」は、イベントや交流、空き家再生など8項目を掲げた。これまでの一過性イベントに終わらない、将来像を明確に打ち出した中心市街地活性化策だ。企業誘致に欠かせない新規産業団地造成、3月末閉鎖の伊勢崎地方卸売市場の跡地利用など、地域経済の活性化対策を中心に聞いた。

 ― 「まちなか宣言」策定の狙いは。

 臂市長 まちなかの活性化をテーマにしたシンポジウムでの意見交換、まちなかに関する市民アンケートなどの回答に基づいてまとめている。まちなかに関わる全ての市民に共有していただく将来像(ビジョン)を定めることで、その実現に向けて連携、協働がさらに進むものと考えた。宣言後は巡回展示会を開催してきたが、地域や学生の皆さんと連携、工夫をこらすなど、引き続き多くの施設やイベントを通じて宣言の周知、将来像の共有化を図っていきたい。

 ― 伊勢崎市の場合、街の中心は従来、本町を中心とした商店街のイメージが強い。今後はこの商店街、駅周辺、さらに整備中のシンボルロード沿道が「まちなか」の対象ですか。

 臂市長 本町通りはこれまでも土地区画整理事業や商業近代化などに取り組んできた。今後は中心市街地として、さらに伊勢崎駅南口エリアまで拡大してハード・ソフト事業で融合。これから形成していく3つの核を中心に、人が集い、往来する賑わいを生み出したい。まず南口駅前広場は、民間主催のイベント利用などの積極活用を促す。事業区域内の福島病院跡地に開設する「(仮称)新保健センター・子育て世代包括支援センター」が2つ目の核となる。3つ目は駅前から南下する整備中のシンボルロード沿線の土地利用を図る中、事業区域に隣接する伊勢崎織物協同組合所有地の有効活用だ。庁内、有識者検討委員会の意見書を基に、本年度中に基本構想を策定する。

 ― 駅周辺の活性化に向けた活動の担い手「まちなかイノベーター」は、国の地域おこし協力隊の制度を活用した伊勢崎市初の取り組みです。

 臂市長 本市独自の「まちなかイノベーター」という名称で、4月から1年間、最長で3年間活動していただく。まちなかが抱える課題に向き合い、その解決につながる新しい仕事を創り出すために、自らの将来設計として起業準備などにも取り組んでもらえればと思う。まちなかに新しい風を吹かせてくれることを期待している。

 ― 地域経済の活性化として「まちなか」から郊外に目を転じた時、新たな企業誘致が欠かせません。そのための新規産業団地造成が急務です。取り組んでいる計画の進展状況は。

 臂市長 現在は南部工業団地周辺の長沼町地区(21.5ヘクタール)、国領町地区(18.8ヘクタール)、境北部工業団地周辺の境東新井地区(39.2ヘクタール)の3カ所で事業化に取り組んでいる。国領町地区は市街化区域への編入に向けた都市計画手続きを進めており、1月に地元説明会を開いた。今夏から秋の市街化編入を目指す。その後は地権者の協力を得て、用地取得に入りたい。長沼町地区と境東新井地区については、地元調整や関係機関との協議を進めている。

 ― 3月末閉鎖で市に返還された伊勢崎地方卸売市場(日乃出町)跡地の活用も関心を集めています。

 臂市長 売り払いを前提とした準備を進めている。2023年度に敷地と建物を含めて現地調査を実施。調査結果に基づいて具体的な売却方法などを決めたい。(次回に続く)

             1  2  3

臂伊勢崎市長に聞く(2022年)  臂伊勢崎市長に聞く(2021年)
再整備に取り組む水生植物園(中央)と年内にも解体される市民プール(左奥)

華蔵寺公園誘客増へ水生植物園再整備やカフェなど誘致
臂伊勢崎市長に聞く-2023【1】(2023年3月29日)


 コロナ対策に追われる中、マニフェスト実現に取り組み、3年目を迎える臂泰雄伊勢崎市長。保健所設置が可能な「保健所政令市」を目指す方針を固め、高齢者の活躍の場を総合的に支援する条例を制定した。伊勢崎市のランドマークともなっている華蔵寺公園内の再整備は3カ年事業の半ばを迎える。脱炭素社会の実現を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みの思いなども聞いた。

― 魅力を高めて来園者を増やそうと、2022年度から3か年でツツジの再生やカフェなど誘致に取り組む「華蔵寺公園共生『はな咲く。』プロジェクト」。対象となっている水生植物園はどのような再整備を。

 臂市長 現在はハナショウブを植栽しているが、根付いていない部分も増えており、あまり水面が活かされてない。再整備では「広い水面と多彩な水生植物園」をコンセプトに、広がりを持たせた水面の中にハナショウブだけでなく、アサザ、スイレン、ミソハギなどを植栽し、季節ごとに楽しんでもらえる空間を計画している。地域の皆様の植栽エリアを設けて、整備や維持管理に参加、協力していただき、一層の魅力アップを図っていきたい。

― ツツジだけでなく華蔵寺公園全体の樹木の老齢化が進んでいます。

 臂市長 供用開始から66年が経過した華蔵寺公園の樹木は、老齢化で樹勢が衰え、回復見込みがない危険なものを適宜伐採している。日照不足などで樹勢が衰えているツツジの再生は、マツなどの樹木の間引きを行った。ツツジの枝にかかった松葉は生育を阻害するため、それを取り除く作業をボランティア皆さんの協力で2022年度は3回実施している。小・中学校への参加呼びかけもあり、延べ341人の参加をいただいた。

― カフェなどの誘致は当初、市民プール解体跡地に計画していましたが、水生植物園の北側設置案も浮上しています。

 臂市長 カフェなどの誘致事業は民間事業者を公募で選定する、「パークPFI制度」を活用する。その設置場所の選定では、マーケットサウンディング型市場調査※で寄せられた民間事業者からのさまざまな意見を参考にしている。プール跡地・水生植物園北側を含めて、各事業者が魅力を感じる設置場所を提案できるよう調整を進めている。このため、まだどことも決まっていない。
※市が実施する公共施設整備などの検討段階で、民間事業者の意見や新たな提案を把握し、事業進展を図るための市場調査・情報収集。

― 再整備後の華蔵寺公園を知ってもらうためのPR動画制作など、プロジェクトでは情報発信まで徹底していますが、情報発信の多様化という点では、4月開始の地元コミュニティラジオ放送局の「いせさきFM」、群馬テレビのデータ放送など、行政情報発信の媒体が増えます。

 臂市長 主に災害時に情報発信してきた防災行政無線の廃止を補完し、非常時における情報発信の強化を図るために活用していく。情報伝達手段を多様化することで、インターネット環境を持たない市民にも市が発信する情報を届けたい。

― いせさきFMは2008年の開局時に、市庁舎東館1階に設けたスタジオから放送していた時期もありました。再入居や駅前インフォメーションセンターでのサテライト・臨時スタジオの可能性は。

 臂市長 いせさきFMの現スタジオ(JA佐波伊勢崎中央支店内、伊勢崎市南千木町)の継続使用を確認しており、市もその意向に沿って対応していきたい。(次回に続く) 

              1  2  3
                        
臂伊勢崎市長に聞く(2022年)  臂伊勢崎市長に聞く(2021年)
 伊勢崎市の副市長に4月、元総務省自治行政局公務員部福利課長で北九州市副市長も務めた藤原通孝氏が就任した。下城賢治副市長(昨年4月就任)との2人副市長体制は、2005年の市町村合併以来17年ぶり。昨年1月に就任した臂泰雄市長の肝いりの政策のひとつで、その思いを受けた両氏にインタビューした。第2回目は藤原副市長。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 赴任してきたばかりでまだ地理もよくわからないまま、ふらりと訪れた三光町の相川考古館。丁寧な説明を受けた様々な展示物の中で、印象に残ったひとつが、国指定重要文化財の埴輪「盛装男子」だった。最近訪れた国立博物館に展示している、同じ古墳から出土した「盛装女子」を思い起こし「いつかどこかで、ご一緒になられるといいですね」と、この話題をロマンチックにまとめた。

 上植木本町の八角形倉庫で注目を集めた「上野国佐位郡正倉跡」(三軒屋遺跡)、近代産業の一角を担った伊勢崎銘仙などの織物産業にもふれ、「地域文化や(藩主が領内に設けた)寺子屋よりも高度な郷学が支えた」と指摘する。「当時は水戸藩ですら14校しかなかった。その中で伊勢崎藩内には25校もあった」と淀みなく数字を並べ、向学心に燃えた藩内の人々の存在を挙げた。

 伊勢崎市の第一印象は「住みやすく、農商工業のバランスがとれた街。それが市政全般にも現れている」。バランスの良さの中にもそれぞれに課題を抱えており、「ここに至る成熟安定期は、時にはある程度のリスクを取ってチャレンジも」と、その必要性を説く。「実際にそうした動きは出てきており、私の仕事は、それらを引っ張ったり、押したりサポートすること」と役割を明確にする。

 まだ全体像が見えず、目につくのは住宅解体跡などの空き地が散見するJR・東武伊勢崎駅南口に広がる駅前再開発・区画整理事業。他自治体にはない風景だが「施行過程の空き地は逆に可能性としてのチャンスと捉えたい」と前向きに語る。外国人の多い地域特性にもふれ、子供たちの家庭での母国語と学校・社会での熱心な日本語学習を評価。静岡県に教育次長として4年間赴任し、「人の一生に大きな影響を与える教育という仕事の奥深さを知った」と振り返る。

 学生時代から毎年、終戦記念日には東京の千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝している。慰霊とともに胸に刻むのは「戦争を避けるために、自分には何ができるのか」。17年前から始めたブログにも認め、月1回のペースで、その他その時々の思いを綴っている。さまざまな赴任地では「歩くことで周囲が見えてくる」と県内でも前橋・桐生・高崎までを徒歩で散策(帰路は電車)。次は館林の片道33キロに挑む。(2022年9月1日 廣瀬昭夫)

                   1  2

過去の伊勢崎市副市長インタビュー   吉田文雄氏   村井健三氏
 伊勢崎市の副市長に4月、元総務省自治行政局公務員部福利課長で、北九州市副市長も務めた藤原通孝氏が就任した。昨年4月に就任した生え抜きの下城賢治氏との2人副市長体制は、2005年の市町村合併以来17年ぶり。昨年1月に就任した臂泰雄市長の肝いりの政策のひとつで、その思いを受けた両氏にインタビューした。1回目は下城副市長。

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 「どこかに適地はないかと、市内への企業進出の引き合いが多い」と顔をほころばせる。悩ましいのは今すぐ提供できる土地がないことだ。群馬県企業局で境北部工業団地と南部工業団地周辺などで造成に向けた作業を進めており、市としては周辺環境整備など「今できること」に力を注いでいる。並行して取り組んでいるのが立地既存企業の底上げサポート。

 副市長として産業経済の他、総務、市民、環境、健康推進、農政、建設、都市計画など、日々の施策に関わる部を所管している。地域の活性化や賑わいの復活も大きな課題だが、コロナ禍がもたらした空白の2年間が「とにかくきつかった」とうなだれる。花火大会や各種のお祭りなど「新しく始めるようなもの。お囃子の指導者も見つからない」などダメージも深刻で、新たな賑わいの創出には、さまざまな協議会の設置で打開を図る。

 「そういうことだったのか、国の考え方や方向性は」。高い見識と情報の引きだしの多さに驚かされ、刺激を受けたのは藤原通孝副市長の日々の市政への取り組み。それぞれに担当所管はあるが、垣根を超えた「情報の共有化」の重要性を痛感し、臂市長が掲げる「Transforming Our World」(私たちの世界を変革する)に向けてタッグを組む。一人副市長の重圧から解放されたことに対しては「頼り切ってはいけない」と自戒する。

 行政側にとっては、まさかの中止に追い込まれた、波志江沼への新観覧車建設問題。その最中は秘書課係長としてマスコミ対応に忙殺された。市政が大きく揺れた過去にふれた時は複雑な表情をみせた。胸を張ったのはコロナ対策。12歳未満は当時、対象外でワクチン接種できなかったため、PCR検査キットを幼稚園、保育園、小学校などに配った。接種現場には職員も派遣している。

 40年ほど前に市職員のバレーボールチームで全国大会に出場した。高じて子供のミニバレーチームでは、指導者として多くの時間を割いた。最近とりわけ気になっているのが”激太り”。コロナ禍で家飲みも増え"休肝日"を求められている。対策のひとつが家庭用自転車マシンの導入。総務部長時代に片道2キロの自転車通勤実績もあり「30分程度、ほぼ毎日こぐようにしている」と、その効果に期待をかける。(2022年8月24日 廣瀬昭夫)

                  1  2

過去の伊勢崎市副市長インタビュー   吉田文雄氏   村井健三氏
「3つの共生」軸に 輝き続けるまちづくり
臂伊勢崎市長に聞く―2022【3】(2022年4月5日)

 『いせ咲く。』は、伊勢崎市が掲げるキャッチコピー。市の花「ツツジ」をモチーフに、「伊勢崎」と「咲く」を組み合わせた造語で「もっと花咲ける街に」の思いを込めている。一方、市政運営のキーワードともいえるのが「3つの共生(世代間・地域間・SDGs)」だ。これらを軸としたまちづくりで、輝き続ける地方都市を目指すという、新年度の取り組みを聞いた。

 ― 子供から子育て世代、勤労者、高齢者まで、あらゆる世代が支えあう「世代間の共生」について、具体的な取り組みを教えて下さい。

 臂市長 新年度に条例制定で支援したいのが、高齢者の社会活動を応援する仕組み。いわば高齢者の「活躍・応援条例」だ。老人会の活動をより活発にし、まだまだ元気な人の地域活動も応援していく。免許返納の一人暮らしでも社会参加を促す、高齢者タクシー利用料金の助成要件も拡充する。教育・保育施設勤務の保育士さんなどが長期間、気兼ねなく産休を取得できる代替経費の助成など、子育て世代の支援環境も整えたい。地域住民や社会福祉協議会などの関係団体と協働し、地域のつながりや相互扶助の機能を高めていきたい。

 ― 市町村合併後の地域の一体感をどのように受け止め、「地域間の共生」を進めますか。

 臂市長 合併後17年を迎えるが、一部にまだひとつになりきれていない状況も見受けられる。支所機能を見直す中で、サービスの平準化、地域の独自性を考えていきたい。伊勢崎市公共施設等総合管理計画を改訂し、適切な資産マネジメントにより中長期的に市全域でバランスの取れた市民サービスを実施。地域間の共生を目指したい。また次の都市計画のマスタープランでは皆さんの理解をいただき、都市政策などを変えていくことも必要だと考えている。

 ― 「SDGs」は2030年までに、誰一人取り残さず、環境・経済・社会などあらゆる面で、より良い持続可能な社会を目指す17の国際開発目標です。市の具体的取り組みを教えて下さい。

 臂市長 環境面では行政組織の環境部を見直していく。女性・障害者雇用とその活躍など、市民の活躍の場をより整えていきたい。市職員が理解を深め、課題を解決するために「SDGsゲーム公認ファシリテーター」を養成する。外国籍の人にとって言葉の壁は高いので、それぞれの外国籍のキーパーソンの方に市の考え方を、広めてもらうような橋渡しも考えている。手話通訳の充実には担当職員養成で対応、という声もあるが、異動などで継続性がない。やはり社会福祉協議会などと連携して人材を確保することが望ましいと思う。民間については市内中小企業のSDGsビジネス推進に「ぐんまSDGsコーチングプログラム」事業費負担金事業も実施していく。

 ― 最後に2年目に向けての意気込みをお聞かせ下さい。

 臂市長 2人副市長体制も整えたこともあり、これから職員の皆さんとともに、本当の意味での地方自治に取り組みたい。伝えているのは「Transforming Our World」(私たちの世界を変革する)。職員は十分なスキルを持っており、やりたいことをもっと前面に出してほしい。職員から変わっていくことが、市民の意識の変化にもつながるはずだ。

 【取材メモ】市内病院、医師会、保健所などの医療連携に触れた時、特例債活用などのスケジュールもあり、やむを得なかったとしながらも「新保健センター計画時に、より幅広い議論ができていれば、医師会の先生方からは保健所も一緒に考えたら、という声が挙がっていたかもしれない」と残念がる。幅広い議論と長期的視野の重要性を改めて自戒した言葉にも受け取れた。
 取材の翌日、市経済界の重鎮から「昨日は市長のところ?」と聞かれた。記事掲載前なのにどうして?の疑問に「ブログで読んだから」と返ってきた。臂市長は市議時代の2011年12月11日の誕生記念日から「継続は力なり」と、日々の活動や感じた事を丹念に綴っている。愚直に記された言葉の一つひとつには人柄がにじみ出ている。市は広報誌や様々なSNSを通して市政情報を発信しているが、市長自らのこうした情報発信は、市民にとっては得難く、市政への親しみや関心を高めることにつながりそうだ。
              
                   1 2 3

臂市長ブログ  2021年伊勢崎市長インタビュー
【写真】群馬県伊勢崎保健福祉事務所。左後方建物は伊勢崎佐波医師会病院

市保健所設置に向け費用対効果を検証
臂伊勢崎市長に聞く―2022【2】(2022年3月31日)

 市保健所設置や伊勢崎織物組合所有の土地活用協定締結は、今後の保健行政や中心街の活性化に向けて、数年間をかける新たな取り組み。一方、同じ初でもネーミングライツは、新年度中の実施が見込まれる。「低い市民所得」の要因と改善策も聞いた。

 ― コロナ対策の最前線を担っている群馬県の伊勢崎保健福祉事務所ですが、市はより迅速な対応に向けて、自前の保健所設置に動いています。政令指定都市と中核市(前橋・高崎市が該当)以外の市で保健所を設置する場合、保健所政令市への移行が求められますが、その取り組み状況を教えて下さい。

 臂市長 これまでも山本一太知事をはじめ群馬県には意向は伝えている。新年度はさまざまな角度から、本市が保健所を設置することのメリットとデメリットを検証する。初めて保健所政令市となり、人口規模では伊勢崎市と同程度の神奈川県茅ヶ崎市など、全国に5つある保健所政令市へのアンケート調査を実施していく。そのうえで、あらためて取り組む意義があるか否かを議会や市民の皆さんに示したい。

 ※編集部注:茅ヶ崎市は神奈川県が郊外の衛生研究所内への保健所移転計画を機に、現在地の利便性などを考慮し、2017年4月に保健所政令市。県保健所の建物をそのまま借用、現在に至る。人口(3月1日現在)と一般会計当初予算(2022年度)を比較すると、茅ヶ崎市約24万人/約765億円、伊勢崎市約21万人/約777億円。

 ― 伊勢崎市織物協同組合が曲輪町に所有する土地(7900平方m)活用も新たな試み。市は昨年、組合と協定を結びましたが、どのような活用、事業手法を考えていますか。

 臂市長 組合の協力に感謝し、協定の目的でもある、中心市街地の活性化と持続的発展につながる活用を目指したい。組合の意向を十分に踏まえ、まちのにぎわいを創出し、本市の魅力を発信できる内容を盛り込みたい。複合施設を検討することになると思う。開発手法としてはPPPやPFIなど、官民連携による整備手法導入も視野に入れている。初めての試みとなるだけに我々も学ぶところは多いし、対外的にも市のイメージアップにつながるはず。そんな取り組みになればと思う。

※PPP(公民が連携して公共サービスを提供する枠組み)、PFI(公共施設の建設、維持管理、運営に民間資金とノウハウを活用する事業手法)。

 ― 公共施設の名前(愛称)に企業名や社名ブランドをつける「ネーミングライツ」。既に昨年、需要調査を終えていますが、実施までのスケジュールは。

 臂市長 新年度早々には応募企業の募集を始める予定。募集期間は2か月程度で、審査委員会の審査を経て、優先交渉権者を決める。命名権者との契約後は一定の周知期間を設け、実際の施設愛称の使用は、10月中までにはと考えている。本事業を新たな財源確保の手法として定着させ、本市と命名権者企業の事業効果を検証しながら、対象施設の追加などを考えていきたい。他自治体が先行する事業だが、本市では公共施設に一民間企業名を冠するのは、行政の公平性などから抵抗があったのかもしれない。

 ― 市民にとっては意外、驚愕の「低い市民所得」。就任前の臂市長の指摘で初めて知る市民も少なくありませんが、その要因と改善策を教えて下さい。※最新の2017年度の1人当たりの市町村民所得は、約286万円と群馬県内12市中最低(最高は太田市の約397万円)。

 臂市長 市内誘致企業に市外の方々が従事、3次産業への依存度の高さ、事業承継されずに高齢化、半事業・半年金の多いことなど、要因は複数ある。対策の一つが、雇用の創出と事業者が利用しやすい更なる支援制度、体制の充実。商工団体、金融機関と連携したビジネスマッチングイベントの市内開催など、市内大手と地元中小企業との関係も強化したい。地場野菜を活用した商品開発など、野菜のブランド化による価値向上の農業振興。高齢化や後継者不足で事業承継が難しい中小企業には、商工団体と連携・サポートしていく。市外在住で市内企業従事者には、移住・定住につながる施策を推進するなど、きめ細かく対応していきたい。
                 1 2 3

2021年伊勢崎市長インタビュー
【写真】新保健センターを建設する、大手町の福島病院跡地

「望ましい保健行政の在り方」に道筋
臂伊勢崎市長に聞く―2022【1】(2022年3月28日)

 就任2年目を迎えた臂泰雄伊勢崎市長。コロナ対策ではワクチン接種や経済支援対策に力を注ぐ一方、マニュフェスト実現や積年の諸課題に取り組んだ。就任早々、複数施設案だった新保健センター・子育て世代包括支援センター計画を、粘り腰で統合に巻き直した。市独自の保健所設置に向けても動き出し、今後の市保健行政の望ましい方向性を探っていく。組織改編も断行するなど、エンジン全開の1年を振り返り、2年目に向けての取り組みを聞いた。

 ― 市長就任から1年を経過しました。コロナ対策に多くの精力を割かざるを得なかった中で、市政運営を振り返っての感想を。

 臂市長 社会情勢の急激な変化、市民ニーズの多様化を肌で感じた1年だった。「建物が使えるから」と、当初は赤堀との2館体制だった新保健センター等計画は、県や国への申請手続き上、時間ギリギリだったが、統合でまとめることができた。職員の皆さんには大変な苦労を掛けたが、合併の理念、本来の望ましいあり方や組織へと舵を切ることができたと思う。その組織改編では農政部の独立、新年度に向けては副市長2人体制の他、細部にわたる組織改編を行った。一方、土地建物を民間に貸与し契約期間満了が迫っていた伊勢崎地方卸売市場は、あり方検討委員会の設置で方向性を導き出してもらう。中心街の活性化に向けて、駅に近い伊勢崎織物協同組合が所有する土地活用に関わる協定締結など、諸課題への道筋はつけることができた。

 ― 不本意だったことはありますか。

 臂市長 本来は市民一人ひとり、あるいは各種団体の皆さんの声をもっと聴き、意見交換ができる話し合いの機会を持ちたかった。残念だが、コロナ禍でことごとくダメになってしまった。今後は積極的に取り組める環境を整えたい。

 ― そのコロナ禍の現状と対策は。

 臂市長 市内では2月末までに7800人の陽性者を確認している。2回目を打ち終え6か月経過対象者のワクチン接種券は、4月中には全て届くよう手配している。言語が壁になり「どうしたらいいかわからない」という外国籍の皆さんには、キーパーソンの人に出演してもらい、多言語で解説した動画を昨年の4月から配信している。外国籍の人を雇用する経営者には、職場でワクチン接種を促してもらうよう理解を求めた。このため外国籍の市民の接種率は高い。例えば3月23日時点の3回目は、全市民14・1パーセントに対して、18歳以上で17パーセントと、3ポイント近く上回っている。

 ― コロナで疲弊した地域経済回復に向けて、市民生活や企業経営支援策は。

 臂市長 プレミアム率30パーセント上乗せコロナ対策認定店支援チケット発行、所得制限で国の子育て世帯給付事業対象外世帯への臨時特別給付、国や県の事業継続支援金受給事業者に上乗せ助成する、事業者支援給付金事業などを行った。基本的には国の対策に準じて実施してきた。
                 1 2 3

2021年伊勢崎市長インタビュー
【国政は立憲民主党が惨敗した衆院選総選挙が終わり、来夏には参院通常選挙が行われる。この間、伊勢崎市議選(4月24日投開票)を控えている。そこで市政の現状について伊勢崎市議会の正副議長に、それぞれの目を通した考え方、取り組みを聞いた。2回目は吉山勇議長】

 「工業団地造成に民活、保育/介護/看護の人材確保に投資」

 議長として心がけているのは「長年にわたって積み上げられた先例を踏まえた議会運営」。時には疑問に思う前例のない事態に、その経緯を調べて改善するなど柔軟に対応してきた。出産を控える議員の出産前後の休業規定はそのひとつ。昨年策定した新型コロナウィルス感染症に対する市議会対応マニュアル。「現実に発生して分かることもある」として議員の感染報告を受けて改定も行った。

 「伊勢崎市議会に限らずほぼ全ての地方自治体において、その機能は不十分」と、二元代表制の現状を語る。市政運営の細かなルールは執行で作成し、各事業案件の是非は執行が提供する情報に基づいてチェックする仕組み。「議会が決めた市政運営のルールに則り、執行状況をチェックできる状態まで進化させたい」の理想は、限りなく高い壁に阻まれている。それでも「少なくとも議会にはその責任がある」と、言葉に自覚と自戒を込める。

 経営者らしい発想で期待を寄せるのは、民間企業の資金力と事業運営能力を活用する「民活」だ。税収増に向けた投資として、民間の工業団地造成や企業誘致、市民プール再建などに、その活用を提案する。人的投資として挙げたのは保育・介護・看護などの学生への市独自の奨学金制度の充実。「こうした人材の確保が困難を極め、早急な対応が必要」と訴える。

 高校卒業後に携わった家業の飲食店経営で、社会人としての経験不足を感じた19歳の時。バスを乗り継ぎ米国を一周する旅に出た。ロスを起点にメキシコ・アカプルコに抜ける45日間の旅の途中、ニューヨークに立ち寄った。摩天楼のビル群に立った時、1年後にはこの地で生活してみようと決めた。米国で語学学校にも通い、飲食店の出前注文の電話を受けながら英語を覚えた。3年と決めていた滞在は6年に及んだ。

 ニューヨークで刺激を受けたラテンジャズやサルサなどの新しい音楽文化。帰国後に地元の人に楽しんでもらおうと、自身経営のお店に毎月、東京から演奏家を呼でみたが、商売としては続かない。市議立候補の動機のひとつは「こうした音楽の楽しさを行政にも手伝ってもらい広めることができたら」。もっともいざその立場になると「他に対応すべきことが山ほどあり」、手つかず状態が今も続いている。(2021年11月28日)

                 【1】【2】

 1  2  3  4  5