【行政/議会】伊勢崎市政や群馬県政、市議会や県議会、選挙などの伊勢崎に係る?話題を取り上げ、まちづくりを中心に行政の多様な取り組を紹介していきます。情報はinfo@press-isesaki.com
インタビューを受ける臂市長

銘仙デザインコンテスト、多文化フェスタなど多彩に20周年事業
臂伊勢崎市長に聞く‐2024【2】(2024年4月5日)

 来年1月1日に新市誕生20周年を迎える伊勢崎市は、多彩な記念事業を計画している。臂市長は、こうした事業を通して、提唱している共生社会の実現も目指している。主だった記念事業の企画意図や概要を聞いた。

― 大正から昭和初期に全国生産量の半分を占めるなど、黄金期を経た伊勢崎銘仙の生産は、環境の著しい変化で終焉を迎えていますが、その存在は今なお市や市民にとって大きな誇りとなっています。「ISESAKI MEISEN Design Award」の狙いは。

 臂市長 伊勢崎銘仙が受け継いできた「染織(色彩・織物)の技術」と「趣向を凝らしたテキスタイル」の新たな可能性を見出すためのコンテストを通して、さらに斬新な色彩とデザインを次世代に継承していきたい。具体的には決まっていないが、優勝賞品は応募のデザインされた布製品を検討している。当然その場では無理なので来年のコンテスト時に用意するなど、継続的に連続性をもって実施できればと考えている。メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎(市文化会館)で12月開催を予定している。

― 本庄市、深谷市の3市連携利根川花火大会には昨年初めて実施した有料観覧席は。

 臂市長 市ラグビー場周辺河川敷を打上場所に8月31日(荒天時は9月1日)に実施する。観覧場所は利根川水辺プラザ公園や島村蚕のふるさと公園などを予定している。
昨年初実施の有料観覧席は2人席・4人席・6人席を用意したが、6人席が売れ残った。駐車場付きでなかったことも影響していたのでは。こうしたノウハウは蓄積していきたいが、3市の連携事業ではさまざまな調整もあり、今のところ考えていない。

― コンピューターゲームをスポーツゲーム化したeスポーツは、県をはじめ各自治体でも産業振興や地域活性化に取り入れ始めています。市が計画しているイベントや企画の狙いは。

 臂市長 メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎(市文化会館)で、来年2月に大会を予定している。また市内各所で年6回、体験会も開催する。このほかクラフト系ゲームによるデジタルまちづくりコンテストも実施する。運営に際してはeスポーツに関係する企業が市内にあれば、産業振興として地元企業育成につなげたい。市内各施設に若者から高齢者まで幅広い層が集い、楽しんでもらうことで、観光資源としても活用していきたい。

― 「ドリーム・サッカー」の具体的な開催内容は。

 臂市長 本市の選抜サッカーチームが、サッカー元日本代表のドリームチームと親善試合を行うほか、サッカー教室も開く。自治総合センターが実施する宝くじスポーツフェア開催事業を活用するため、観戦は無料招待。市の陸上競技場で来年3月に開催する。

― 市民、各種団体、企業などを対象に、企画事業の経費を一部補助する制度はこれまでにありましたが、20周年事業の「官民連携事業支援補助金」は。

 臂市長 全市的に取り組む大きなイベントから、伝統文化や芸能といった地域に根差した小さな活動まで、幅広い応援が今回の事業の特長だ。コロナ禍でお祭り、山車・屋台、芸能といった地域に伝わる伝統的な活動が失われつつあるとの声もあり、伝統活動の復活、伝承に活用してほしい。
事業は「市を元気に」(50万円を5件程度)、「地域を元気に」(20万円を10件程度)、「地域文化・芸術を守る」(10万円を55件程度)の3区分で、補助金(補助率は事業費の3分の2)を交付する。

― 多文化共生フェスタやスポーツ交流イベントについては。

 臂市長 日本語教室や外国人向け生活オリエンテーション、多文化理解講座、災害時外国人支援ボランティア研修会などを継続的に開いており、日常的に交流を深め、共生社会に向けた環境づくりに努めている。昨年初めて開催した多文化共生フェスタでは、各国のダンスや伝統衣装の披露、さらに食文化に触れるなど、多くの交流機会を得ることができたと思う。今年は20周年事業として、これまで未参加の団体などにも参加してもらえるよう広く呼び掛けていき、11月に伊勢崎市民プラザで開催する。
交流を深めるには食とスポーツの2つの要素は欠かせない。そこで今年はスポーツ教室も開催する。日本人のクラブチームのような形態は少ないようなので、企業を巻き込んで企業内スポーツチームなどの参加も促していく。これらフェスタやスポーツ交流イベントを通して、多文化共生社会の実現に向けたまちづくりに取り組んでいきたい。

【取材メモ】20周年事業以外で保健所政令市への取り組みも聞いた。調整・詳細を詰めている段階として具体的な話は出なかったが、「自分としては間違いなく、絶対に(自前の保健所は)あった方がいい」と、訴えるように漏れた言葉が印象に残った。
国政の自民党の政治資金パーティー問題には「国政でやるべき政治活動はしっかりやっていただいていると思うが、選挙となると特に地方では、後援会づくりをはじめとして人手も必要になる」と政治資金パーティーには理解を示した。ただ「収支は出せるように」と付け加えた。(終わり)
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能登半島地震の被災地で救助活動や土砂倒木除去を行った伊勢崎市消防本部隊員たち

防災対策や新市誕生20周年に注力 伊勢崎市の新年度事業
臂伊勢崎市長に聞く‐2024【1】(2024年3月29日)

 伊勢崎市は2024年度予算を「防災と共生による未来に続く地方都市」実現予算と謳っている。正月早々の能登半島地震は災害の恐ろしさを改めて浮き彫りにした。一方、来年1月1日には旧市と赤堀・東・境の市町村合併から20周年を迎える。県内一人口の多い外国人居住者や旧町村市民との一体感の醸成を、共生社会の実現でより確かなものにする節目の年にもなりそうだ。臂泰雄市長に防災と20周年・共生社会実現を中心に聞いた。

― 能登半島地震発生では甚大な被害が明らかになる中、市の被災地支援も多岐にわたりました。

 臂市長 地震の揺れを感じたのは、駅伝の応援を終えて自宅で年始客と話をしている最中だった。すぐ外に出て周囲も確認したが、市内ではさほど大きな被害はないとみて、被災地支援でできることを考えた。県からの要請を受けて緊急消防援助隊や伊勢崎市民病院の災害派遣医療チームDMATの出動があり、庁内では安心安全課を中心に情報収集、さまざまな要請に対応した。新潟県長岡市寺泊の高台にある伊勢崎市臨海学校からは当日、市の教育委員会経由で津波災害の避難民を受け入れるための緊急開所連絡が入った。

 ※編集部注 伊勢崎市消防本部は1日〜11日まで、一隊平均15人で4次隊、延べ59人を派遣。石川県輪島市内を中心に、倒壊した建物などで人命救助にあたった。伊勢崎市民病院のDMATは、1月4日〜7日まで医師1人、看護師2人、業務調整員2人計5名編成のチームが、石川県七尾市の能登総合病院で被災者のスクリーニングなどに従事した。上下水道局は1月30日〜3月19日まで3回に分けて職員延べ20人を派遣し、石川県輪島市で給水車による応急給水。安心安全課は石川県かほく市で住居被害認定調査。市社会福祉課で受け付けた義援金・救援金は8,879,490円(3月21日現在)。


救急稼働
被災地で応急給水に派遣された給水車と救急活動に派遣された市民病院のDMAT


― 伊勢崎市内では2014年2月の大雪、2019年10月に台風災害に見舞われています。市が新たに講じてきた災害対策は。

 臂市長 大雪災害以降は、いせさき情報メールに気象注意報・警報などで発令と同時に自動で登録者に送信する機能を追加している。さらに、いせさき情報メールと各種SNS(X、Facebook)を連動させるなど、システムのバージョンアップを図ってきた。
台風災害を教訓に避難所職員の増員、防災倉庫にある備蓄品の一部を避難所に分散配布なども行っている。避難所運営マニュアルは水災と震災の対応を分けるなど見直しを図った。

― 能登半島地震などから得られた、今後の防災対策などは。

 臂市長 能登半島地震では、災害関連死の方が少なくなかった。避難所での生活が難しい高齢者や障害者への支援は、十分な配慮が必要と再認識した。障害者に対応した施設はほとんどない中、こうした方々は体育館などでは避難所暮らしが困難で、保護者も連れて行きにくい状況。中には普段通い慣れているデーサービスに行く、という話も聞いている。当事者や保護者の皆さまの声をよく伺いながら、指定避難所に加えて特別養護老人ホームなど、民間のしっかりした福祉施設などとの協力協定締結も進めていきたい。

― その指定避難場所ですが、小学校の体育館空調設備の新設などが予定されています。

 臂市長 避難所の整備として重点的に取り組んでいく。2024年度は北・南・茂呂・三郷・宮郷・名和・豊受・北第2・広瀬・坂東・宮郷第2・境剛志・境東の13小学校で新設し、翌年度に残りの小学校を実施する。中学校は四ツ葉学園を含む全12校が既に工事を発注し、今夏には利用できる見通しだ。アイオーしんきん伊勢崎アリーナ(伊勢崎市民体育館)も新設する。また設備の更新は市図書館や障害者センター、殖蓮・赤堀・境東・境島村の4公民館を計画している。


― 災害時の情報発信の充実はどのように図っていますか。

 臂市長 総合防災マップは市のホームページでも公開しているが、新たにスマートフォーン向けWEB版を新年度中に作成、提供したい。災害時に現在地から近い避難所、周囲の河川のその時点の水位がわかるなど、災害に的確に対処できる情報を素早く、手軽に入手できるようにしていく。

 スマートフォーンを持たず、テレビ、ネット環境がない市民には、いせさきFMの割り込み放送の仕組みを利用し、災害発生時の市からの災害情報を速やかに届けたい。Jアラート(全国瞬時警報システム)の緊急地震速報や弾道ミサイル情報を受け、スイッチを切っていても自動でラジオが起動、災害情報を受信できる、FM自動起動ラジオの無償貸与を予算化した。避難行動要支援者名簿登録者を中心に2000台分を確保した。
 
 群馬県内で外国人居住者の多い伊勢崎市では、外国人に対しての情報発信も極めて重要だ。既存の総合防災マップに加えて、英語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語の4言語版を新たに作製し、関係各所に配布していく。

防災マップ
河川別浸水想定区域がわかる総合防災マップと4か国語の総合防災マップ

― 市民の防災意識を高めるための今後の取り組みは。

 臂市長 総合防災マップの解説動画を既にホームページに掲載している他、出前講座、災害図上訓練、避難所運営ゲームなどの開催で関心を高める取り組みを行ってきた。いせさき情報メール、SNSなどを通して引き続き防災意識の向上に努めていきたい。

 能登半島地震は昨年に続いて起きている。地震は時や地域を選ばず発生する、ということを前提に取り組む必要性を強く感じた。耐震などのハード面の整備とともに、高齢者などの社会的弱者をどのように助けるのかなど、日頃から近隣とのコミュニティーの重要性を訴えていきたい。(次回に続く)
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 コロナ禍で日常が戻り始める中、行政区や各団体の式典やイベントに議長として招かれた。「『開催していただき、ありがとうございます』。冒頭にこうした感謝の言葉を述べる機会が多かった」と議長一年を振り返る。市議会代表挨拶を重ねる中「それぞれに地域の色が出ている」と改めて気づかされた。加えて地域ごとの産業祭などでは、香しい食べ物の匂いの違いを再認識。挨拶ではそれらの地域の特色に触れ、会場を盛り上げた。

 市議会と議員の活動原則、市議会の機能強化などを明文化した市議会最高規範となる「伊勢崎市議会基本条例」(全9章27条)が昨年5月に施行された。運用開始から1年を迎えるが、制定にあたっては伊勢崎クラブ内で若手中心メンバーとして意見を交わし、その調整、集約に関わった。制定後は「やっと終わった」という達成感とともに、様々な考え方や意見のぶつかりあいは「楽しかった」と思い起こす。

 条例前文には臂泰雄市長も政策に掲げる「共生社会の推進」を盛り込み、「議論を尽くす・市民に開かれた・専門性のある議会」など目指して「チーム議会」で取り組むことを表明している。とはいえ「細部はまだ詰めきれていない部分もある」として「条例検証及び見直し」条項を設けた。今後運用を図る中で、条例理念の整合性を図りながら毎年見直していく。近くその会合を始めるという。

 市町村合併後の伊勢崎市議会初代議長(2015年)が叔父の新藤晄旦氏。「他の立候補者の選挙も手伝うなど身近に政治に触れる機会や市政に素朴な疑問を感じた」ことが立候補のきっかけだった。4期目のベテランとなった今では、決算特別委員長を務めたこともあり、予算案・決算は「安全安心、災害、医療、福祉、教育など、関心や気がかりなことは1円たりとも疎かにしない」姿勢で事業や数字をチェックしている。

 保育士として9年間、保育園に勤務していた。朝から夜8時近くまで常に子供と一緒だった。「座って靴下を履いていた子が、立って履けるようになるのは、その時しかわからない。そうした成長を見ている楽しさ、それを親に伝えて喜ぶ姿を見ることもうれしかった」。議員活動の傍ら時間が空くと、今でも副代表を務めている2か所の児童クラブに足を運び、子供たちの相手をする。多忙な時間の中、自分自身を癒す時間にもなっている。
 時折笑顔を交えてインタビューに答える臂市長

電子地域通貨が地域活性化の新たな価値創造ツールに
臂伊勢崎市長に聞く‐2023【3】(2023年4月13日)

 ― 5月8日以降、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられます。伊勢崎市として以後の方針は。

 臂市長 県の方向性もみながら、可能なものは5月8日を待たずに緩和する。制限などはなくなるが、感染状況に応じて公共施設での感染防止対策、市民の皆さまにも基本的な感染防止対策は引き続き呼び掛けていく。

 ― マニフェストに掲げていた保健所設置が可能となる「保健所政令市」へ、2026年4月移行を想定した検討結果を明らかにしています。この決断にはコロナ禍も影響しましたか。

 臂市長 市民の健康問題を考えた時、感染状況など、やはり直接情報を持っている方がより迅速な対応ができると感じた。運営や人材確保などさまざまな課題はあるが、コロナで自前の保健所設置の思いをより強くした。外国籍の住民との共生や関係性、商工団体など産業界との連携の重要性、行政情報の発信では広報の充実など、コロナ禍でより見えてきたことは多い。

 ― 同様にマニフェストで掲げた、高齢者の活躍を後押しするための基本理念を定めた「伊勢崎市高齢者が生き生きと活躍できる社会の実現の推進に関する条例」が4月1日から施行されました。

 臂市長 少子高齢化の進行と人口減少対策には、子育て支援に力を注ぐ一方、高齢者が地域の担い手の一人として活躍する環境づくり、世代間の共生が必要だと感じていた。就労、趣味や学び直し、ボランティア活動など、高齢者が生きがいを持ち、その希望と適性にあった活動に取り組む社会の実現が、問題解決策のひとつになるはずだ。老人クラブの活性化の他、市民や事業者、地域活動団体の皆様と連携・協力しながら、条例の基本理念の実現を図っていきたい。

 ― 導入を予定している電子地域通貨の名称選びを実施中(4月21日まで)ですが、仕組みや導入の狙いは。

 臂市長 スマートフォンのアプリやQRコード付きカードを利用して市内加盟店でポイントを使った支払いができる仕組み。今年度は従来の30%のプレミアム付商品券事業を電子地域通貨で実施する。発行総額はプレミアム分を含めて10億4000万円、加盟店は初年度500店を目標にしている。紙の商品券に比べて店の負担を大幅に減らし、利用者は1円単位の支払いにも使える。行政からの様々な給付事業手続きを迅速にし、行政や地域事業への参加、協力の際のポイント付与など、市民参加を促すことも期待できる。市民、事業者、行政にとって利便性の向上が図られ、新たな価値創造の可能性を秘めた魅力的なツールとなる。地域全体のDX(デジタル トランスフォーメーション※デジタル技術による社会の変革)推進のため、その基盤を整備していきたい。

 ― 行政のデジタル化推進にあたっては、全国的にマイナンバーカード普及が進んでいます。伊勢崎市の現状と今後の目標は。

 臂市長 本市のカード交付率は2月末時点で58・2%(全国63・5%)、申請率は69・11%(全国74・8%)。今年の1月に市民課にマイナンバーカード係を設置し、職員も増員するなど交付体制を強化している。本年度末時点の目標は交付率65%、翌年度末で70%としているが、前倒し達成で1日にも早く全国に追いつき、追い越せるようカード普及に取り組んでいる。

 ― 地球温暖化対策の一環として伊勢崎市は2035年度までに公用車で電気自動車30%、ハイブリッド車65%、プラグインハイブリッド車5%の切り替え目標を立てています。

 臂市長 本市は昨年12月、公用車への次世代自動車導入計画を策定した。導入を進めていくのは公用車308台のうち軽自動車が70%の215台、小型自動車が22%の67台、普通自動車が8%の26台を計画している。各メーカーの電気自動車販売がまだ少ないことから低燃費のハイブリッド車を先行して導入していく。今後、電気自動車の車種が増えてきた時は、次世代自動車の販売事情に応じて導入計画を見直していきたい。


【取材メモ】
 春の桜、夏の蓮などで地域の憩いの場として愛されている伊勢崎市境伊与久の「伊与久沼」。この魅力を内外に伝えようと発足した「伊与久沼有効活用の会」が、テレビ東京「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦スペシャル」に応募し、3月19日に放送された。
 生き物確保やごみ拾いに参加したのは地元のボランティアおよそ200人。MCの田村淳(ロンドンブーツ1号2号)さんが番組冒頭、ゴム長靴や作業服のボランティア集団の中に一人だけスーツ姿の臂市長を見つけ、いじってきた。
 臂市長がマスク越しにぼそぼそと答えたが、テレビではよく聞き取れなかったので取材時に確認した。その返答は「長靴は持ってきました」。もっとも撮影開始が30分遅れて次の予定が迫っていたため、求められても対応できなかったそうだ。時間が許せば律儀な臂市長のこと、参加者との一体感を醸成するゴミ拾いパフォーマンスを見せたのかもしれない。 

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臂伊勢崎市長に聞く(2022年)  臂伊勢崎市長に聞く(2021年)
「伊勢崎駅ピアノ」お披露目セレモニー。ラッコタワーのキーボード、真一ジェットさんが演奏(2022年7月16日伊勢崎駅南口駅前通路)

「まちなか宣言」ビジョン明確に駅南口活性化
臂伊勢崎市長に聞く‐2023【2】(2023年4月5日)


 官民連携組織「まちなか活性化支援会議」が策定した「まちなか宣言」は、イベントや交流、空き家再生など8項目を掲げた。これまでの一過性イベントに終わらない、将来像を明確に打ち出した中心市街地活性化策だ。企業誘致に欠かせない新規産業団地造成、3月末閉鎖の伊勢崎地方卸売市場の跡地利用など、地域経済の活性化対策を中心に聞いた。

 ― 「まちなか宣言」策定の狙いは。

 臂市長 まちなかの活性化をテーマにしたシンポジウムでの意見交換、まちなかに関する市民アンケートなどの回答に基づいてまとめている。まちなかに関わる全ての市民に共有していただく将来像(ビジョン)を定めることで、その実現に向けて連携、協働がさらに進むものと考えた。宣言後は巡回展示会を開催してきたが、地域や学生の皆さんと連携、工夫をこらすなど、引き続き多くの施設やイベントを通じて宣言の周知、将来像の共有化を図っていきたい。

 ― 伊勢崎市の場合、街の中心は従来、本町を中心とした商店街のイメージが強い。今後はこの商店街、駅周辺、さらに整備中のシンボルロード沿道が「まちなか」の対象ですか。

 臂市長 本町通りはこれまでも土地区画整理事業や商業近代化などに取り組んできた。今後は中心市街地として、さらに伊勢崎駅南口エリアまで拡大してハード・ソフト事業で融合。これから形成していく3つの核を中心に、人が集い、往来する賑わいを生み出したい。まず南口駅前広場は、民間主催のイベント利用などの積極活用を促す。事業区域内の福島病院跡地に開設する「(仮称)新保健センター・子育て世代包括支援センター」が2つ目の核となる。3つ目は駅前から南下する整備中のシンボルロード沿線の土地利用を図る中、事業区域に隣接する伊勢崎織物協同組合所有地の有効活用だ。庁内、有識者検討委員会の意見書を基に、本年度中に基本構想を策定する。

 ― 駅周辺の活性化に向けた活動の担い手「まちなかイノベーター」は、国の地域おこし協力隊の制度を活用した伊勢崎市初の取り組みです。

 臂市長 本市独自の「まちなかイノベーター」という名称で、4月から1年間、最長で3年間活動していただく。まちなかが抱える課題に向き合い、その解決につながる新しい仕事を創り出すために、自らの将来設計として起業準備などにも取り組んでもらえればと思う。まちなかに新しい風を吹かせてくれることを期待している。

 ― 地域経済の活性化として「まちなか」から郊外に目を転じた時、新たな企業誘致が欠かせません。そのための新規産業団地造成が急務です。取り組んでいる計画の進展状況は。

 臂市長 現在は南部工業団地周辺の長沼町地区(21.5ヘクタール)、国領町地区(18.8ヘクタール)、境北部工業団地周辺の境東新井地区(39.2ヘクタール)の3カ所で事業化に取り組んでいる。国領町地区は市街化区域への編入に向けた都市計画手続きを進めており、1月に地元説明会を開いた。今夏から秋の市街化編入を目指す。その後は地権者の協力を得て、用地取得に入りたい。長沼町地区と境東新井地区については、地元調整や関係機関との協議を進めている。

 ― 3月末閉鎖で市に返還された伊勢崎地方卸売市場(日乃出町)跡地の活用も関心を集めています。

 臂市長 売り払いを前提とした準備を進めている。2023年度に敷地と建物を含めて現地調査を実施。調査結果に基づいて具体的な売却方法などを決めたい。(次回に続く)

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臂伊勢崎市長に聞く(2022年)  臂伊勢崎市長に聞く(2021年)
再整備に取り組む水生植物園(中央)と年内にも解体される市民プール(左奥)

華蔵寺公園誘客増へ水生植物園再整備やカフェなど誘致
臂伊勢崎市長に聞く-2023【1】(2023年3月29日)


 コロナ対策に追われる中、マニフェスト実現に取り組み、3年目を迎える臂泰雄伊勢崎市長。保健所設置が可能な「保健所政令市」を目指す方針を固め、高齢者の活躍の場を総合的に支援する条例を制定した。伊勢崎市のランドマークともなっている華蔵寺公園内の再整備は3カ年事業の半ばを迎える。脱炭素社会の実現を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みの思いなども聞いた。

― 魅力を高めて来園者を増やそうと、2022年度から3か年でツツジの再生やカフェなど誘致に取り組む「華蔵寺公園共生『はな咲く。』プロジェクト」。対象となっている水生植物園はどのような再整備を。

 臂市長 現在はハナショウブを植栽しているが、根付いていない部分も増えており、あまり水面が活かされてない。再整備では「広い水面と多彩な水生植物園」をコンセプトに、広がりを持たせた水面の中にハナショウブだけでなく、アサザ、スイレン、ミソハギなどを植栽し、季節ごとに楽しんでもらえる空間を計画している。地域の皆様の植栽エリアを設けて、整備や維持管理に参加、協力していただき、一層の魅力アップを図っていきたい。

― ツツジだけでなく華蔵寺公園全体の樹木の老齢化が進んでいます。

 臂市長 供用開始から66年が経過した華蔵寺公園の樹木は、老齢化で樹勢が衰え、回復見込みがない危険なものを適宜伐採している。日照不足などで樹勢が衰えているツツジの再生は、マツなどの樹木の間引きを行った。ツツジの枝にかかった松葉は生育を阻害するため、それを取り除く作業をボランティア皆さんの協力で2022年度は3回実施している。小・中学校への参加呼びかけもあり、延べ341人の参加をいただいた。

― カフェなどの誘致は当初、市民プール解体跡地に計画していましたが、水生植物園の北側設置案も浮上しています。

 臂市長 カフェなどの誘致事業は民間事業者を公募で選定する、「パークPFI制度」を活用する。その設置場所の選定では、マーケットサウンディング型市場調査※で寄せられた民間事業者からのさまざまな意見を参考にしている。プール跡地・水生植物園北側を含めて、各事業者が魅力を感じる設置場所を提案できるよう調整を進めている。このため、まだどことも決まっていない。
※市が実施する公共施設整備などの検討段階で、民間事業者の意見や新たな提案を把握し、事業進展を図るための市場調査・情報収集。

― 再整備後の華蔵寺公園を知ってもらうためのPR動画制作など、プロジェクトでは情報発信まで徹底していますが、情報発信の多様化という点では、4月開始の地元コミュニティラジオ放送局の「いせさきFM」、群馬テレビのデータ放送など、行政情報発信の媒体が増えます。

 臂市長 主に災害時に情報発信してきた防災行政無線の廃止を補完し、非常時における情報発信の強化を図るために活用していく。情報伝達手段を多様化することで、インターネット環境を持たない市民にも市が発信する情報を届けたい。

― いせさきFMは2008年の開局時に、市庁舎東館1階に設けたスタジオから放送していた時期もありました。再入居や駅前インフォメーションセンターでのサテライト・臨時スタジオの可能性は。

 臂市長 いせさきFMの現スタジオ(JA佐波伊勢崎中央支店内、伊勢崎市南千木町)の継続使用を確認しており、市もその意向に沿って対応していきたい。(次回に続く) 

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臂伊勢崎市長に聞く(2022年)  臂伊勢崎市長に聞く(2021年)
 伊勢崎市の副市長に4月、元総務省自治行政局公務員部福利課長で北九州市副市長も務めた藤原通孝氏が就任した。下城賢治副市長(昨年4月就任)との2人副市長体制は、2005年の市町村合併以来17年ぶり。昨年1月に就任した臂泰雄市長の肝いりの政策のひとつで、その思いを受けた両氏にインタビューした。第2回目は藤原副市長。

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 赴任してきたばかりでまだ地理もよくわからないまま、ふらりと訪れた三光町の相川考古館。丁寧な説明を受けた様々な展示物の中で、印象に残ったひとつが、国指定重要文化財の埴輪「盛装男子」だった。最近訪れた国立博物館に展示している、同じ古墳から出土した「盛装女子」を思い起こし「いつかどこかで、ご一緒になられるといいですね」と、この話題をロマンチックにまとめた。

 上植木本町の八角形倉庫で注目を集めた「上野国佐位郡正倉跡」(三軒屋遺跡)、近代産業の一角を担った伊勢崎銘仙などの織物産業にもふれ、「地域文化や(藩主が領内に設けた)寺子屋よりも高度な郷学が支えた」と指摘する。「当時は水戸藩ですら14校しかなかった。その中で伊勢崎藩内には25校もあった」と淀みなく数字を並べ、向学心に燃えた藩内の人々の存在を挙げた。

 伊勢崎市の第一印象は「住みやすく、農商工業のバランスがとれた街。それが市政全般にも現れている」。バランスの良さの中にもそれぞれに課題を抱えており、「ここに至る成熟安定期は、時にはある程度のリスクを取ってチャレンジも」と、その必要性を説く。「実際にそうした動きは出てきており、私の仕事は、それらを引っ張ったり、押したりサポートすること」と役割を明確にする。

 まだ全体像が見えず、目につくのは住宅解体跡などの空き地が散見するJR・東武伊勢崎駅南口に広がる駅前再開発・区画整理事業。他自治体にはない風景だが「施行過程の空き地は逆に可能性としてのチャンスと捉えたい」と前向きに語る。外国人の多い地域特性にもふれ、子供たちの家庭での母国語と学校・社会での熱心な日本語学習を評価。静岡県に教育次長として4年間赴任し、「人の一生に大きな影響を与える教育という仕事の奥深さを知った」と振り返る。

 学生時代から毎年、終戦記念日には東京の千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝している。慰霊とともに胸に刻むのは「戦争を避けるために、自分には何ができるのか」。17年前から始めたブログにも認め、月1回のペースで、その他その時々の思いを綴っている。さまざまな赴任地では「歩くことで周囲が見えてくる」と県内でも前橋・桐生・高崎までを徒歩で散策(帰路は電車)。次は館林の片道33キロに挑む。(2022年9月1日 廣瀬昭夫)

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過去の伊勢崎市副市長インタビュー   吉田文雄氏   村井健三氏
 伊勢崎市の副市長に4月、元総務省自治行政局公務員部福利課長で、北九州市副市長も務めた藤原通孝氏が就任した。昨年4月に就任した生え抜きの下城賢治氏との2人副市長体制は、2005年の市町村合併以来17年ぶり。昨年1月に就任した臂泰雄市長の肝いりの政策のひとつで、その思いを受けた両氏にインタビューした。1回目は下城副市長。

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 「どこかに適地はないかと、市内への企業進出の引き合いが多い」と顔をほころばせる。悩ましいのは今すぐ提供できる土地がないことだ。群馬県企業局で境北部工業団地と南部工業団地周辺などで造成に向けた作業を進めており、市としては周辺環境整備など「今できること」に力を注いでいる。並行して取り組んでいるのが立地既存企業の底上げサポート。

 副市長として産業経済の他、総務、市民、環境、健康推進、農政、建設、都市計画など、日々の施策に関わる部を所管している。地域の活性化や賑わいの復活も大きな課題だが、コロナ禍がもたらした空白の2年間が「とにかくきつかった」とうなだれる。花火大会や各種のお祭りなど「新しく始めるようなもの。お囃子の指導者も見つからない」などダメージも深刻で、新たな賑わいの創出には、さまざまな協議会の設置で打開を図る。

 「そういうことだったのか、国の考え方や方向性は」。高い見識と情報の引きだしの多さに驚かされ、刺激を受けたのは藤原通孝副市長の日々の市政への取り組み。それぞれに担当所管はあるが、垣根を超えた「情報の共有化」の重要性を痛感し、臂市長が掲げる「Transforming Our World」(私たちの世界を変革する)に向けてタッグを組む。一人副市長の重圧から解放されたことに対しては「頼り切ってはいけない」と自戒する。

 行政側にとっては、まさかの中止に追い込まれた、波志江沼への新観覧車建設問題。その最中は秘書課係長としてマスコミ対応に忙殺された。市政が大きく揺れた過去にふれた時は複雑な表情をみせた。胸を張ったのはコロナ対策。12歳未満は当時、対象外でワクチン接種できなかったため、PCR検査キットを幼稚園、保育園、小学校などに配った。接種現場には職員も派遣している。

 40年ほど前に市職員のバレーボールチームで全国大会に出場した。高じて子供のミニバレーチームでは、指導者として多くの時間を割いた。最近とりわけ気になっているのが”激太り”。コロナ禍で家飲みも増え"休肝日"を求められている。対策のひとつが家庭用自転車マシンの導入。総務部長時代に片道2キロの自転車通勤実績もあり「30分程度、ほぼ毎日こぐようにしている」と、その効果に期待をかける。(2022年8月24日 廣瀬昭夫)

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