【さいとう とものり】1953年12月3日、伊勢崎市上田町生まれ、在住。太田高校、成城大学文芸学部卒業後、埼玉県の草加中学に6年間勤務。群馬に戻り玉村中学(4年)を経て新田暁(3年)、大泉(10年)、境(5年)、伊勢崎(10年)の各高校の国語教師。定年後の2015年5月3日、「CAFE〜風の詩〜ショコラ」(桐生市宮本町1-3-1)開業。1990年、佛教大学で博物館学芸員資格取得。アマ将棋3段。
充実人生 高校教員経て 念願の飲食店経営
「CAFE〜風の詩〜ショコラ」店主 斎藤智徳さん

 桐生川ダムやノコギリ屋根などが登場することもあり、題材に取り上げた「ノースライト」(横山秀夫著)。伊勢崎市内の読書グループ、赤石読書会(桐野嘉六会長)が、店内で開いた特別例会で、講師依頼を受けた斉藤さんが同書を読み解いた。主要登場人物の紹介から全体像に迫り、細部に至る推察を披露。ご愛嬌の脱線ぶりは、教員時代を彷彿とさせる。

 経済学部に在籍していた大学1年の夏。「夏の流れ・正午なり」(丸山健二著)の出会いに衝撃を受け、文芸学部に編入した。沢木耕太郎のノンフィクション作品にも刺激を受けた。「時代小説の他、何でも」と、今も週1冊のペースで本を手に取る。教員時代にフェルメールやアンドリュー・ワイエスに魅せられ、欧米の主要な美術館を訪れた。県職員として美術館や博物館への異動を模索したこともある。

 国語教師として38年。最初の頃の教え子に、将棋の北島忠雄七段がいる。著書「解明!相穴熊 最先端」が贈られ、今でもハガキのやり取りが続いている。最後の10年間は伊勢崎高校で、将棋部顧問を務めた。未体験でも優秀な女子部員を新たに募り、指導の末に富山市で開催された全国大会に導いた。もともと各校の女子選手層の薄さが幸いしたことも明かす。

 定年後は当初から飲食店開業を計画していた。学生時代は都内・新橋でカレー、とんかつ店のアルバイトに明け暮れ、性にあっていた。店舗探しは伊勢崎市内から始めたが、家賃や土地柄も考慮し、元新聞販売店を改装した現店舗に辿り着いた。2階を絵画や写真展などのギャラリーとして活用。1階でコンサートの定期開催など、地域の交流拠点として親しまれている。

 店の営業は午前7時から午後3時までで、火・金曜が定休日。予約など来店数が予想されるときは妻の千代美さんの助けを借り、普段は1人で切り盛りしている。様変わりした現在のコロナ渦と違い、開店当初は順調だった。以後も数年間は元同僚や教え子で賑わい、その後は徐々にご近所さんに繋がっていく。その様子を地元紙に、手慣れた筆致でエッセーに綴っている。

 来店者のとの交流が「楽しくてしょうがない」と充実した日々を語る。「儲かってないけどね」と続ける。「天職では?」と最近、カフェ経営同様に力を注いでいるのが、1カ月に1本のペースで執筆を始めた週間フリーペーパーのリポーター。最近の題材は天幕城跡(伊勢崎市)や賀茂神多(桐生市)など。多忙でまとまった休みが取れないのは、8年前から飼い始めた迷い猫、店名となった「ショコラ」の存在も大きい。
(2021年5月31日 廣瀬昭夫)