防災対策や新市誕生20周年に注力 伊勢崎市の新年度事業
臂伊勢崎市長に聞く‐2024【1】(2024年3月29日)
能登半島地震の被災地で救助活動や土砂倒木除去を行った伊勢崎市消防本部隊員たち

防災対策や新市誕生20周年に注力 伊勢崎市の新年度事業
臂伊勢崎市長に聞く‐2024【1】(2024年3月29日)

 伊勢崎市は2024年度予算を「防災と共生による未来に続く地方都市」実現予算と謳っている。正月早々の能登半島地震は災害の恐ろしさを改めて浮き彫りにした。一方、来年1月1日には旧市と赤堀・東・境の市町村合併から20周年を迎える。県内一人口の多い外国人居住者や旧町村市民との一体感の醸成を、共生社会の実現でより確かなものにする節目の年にもなりそうだ。臂泰雄市長に防災と20周年・共生社会実現を中心に聞いた。

― 能登半島地震発生では甚大な被害が明らかになる中、市の被災地支援も多岐にわたりました。

 臂市長 地震の揺れを感じたのは、駅伝の応援を終えて自宅で年始客と話をしている最中だった。すぐ外に出て周囲も確認したが、市内ではさほど大きな被害はないとみて、被災地支援でできることを考えた。県からの要請を受けて緊急消防援助隊や伊勢崎市民病院の災害派遣医療チームDMATの出動があり、庁内では安心安全課を中心に情報収集、さまざまな要請に対応した。新潟県長岡市寺泊の高台にある伊勢崎市臨海学校からは当日、市の教育委員会経由で津波災害の避難民を受け入れるための緊急開所連絡が入った。

 ※編集部注 伊勢崎市消防本部は1日〜11日まで、一隊平均15人で4次隊、延べ59人を派遣。石川県輪島市内を中心に、倒壊した建物などで人命救助にあたった。伊勢崎市民病院のDMATは、1月4日〜7日まで医師1人、看護師2人、業務調整員2人計5名編成のチームが、石川県七尾市の能登総合病院で被災者のスクリーニングなどに従事した。上下水道局は1月30日〜3月19日まで3回に分けて職員延べ20人を派遣し、石川県輪島市で給水車による応急給水。安心安全課は石川県かほく市で住居被害認定調査。市社会福祉課で受け付けた義援金・救援金は8,879,490円(3月21日現在)。


救急稼働
被災地で応急給水に派遣された給水車と救急活動に派遣された市民病院のDMAT


― 伊勢崎市内では2014年2月の大雪、2019年10月に台風災害に見舞われています。市が新たに講じてきた災害対策は。

 臂市長 大雪災害以降は、いせさき情報メールに気象注意報・警報などで発令と同時に自動で登録者に送信する機能を追加している。さらに、いせさき情報メールと各種SNS(X、Facebook)を連動させるなど、システムのバージョンアップを図ってきた。
台風災害を教訓に避難所職員の増員、防災倉庫にある備蓄品の一部を避難所に分散配布なども行っている。避難所運営マニュアルは水災と震災の対応を分けるなど見直しを図った。

― 能登半島地震などから得られた、今後の防災対策などは。

 臂市長 能登半島地震では、災害関連死の方が少なくなかった。避難所での生活が難しい高齢者や障害者への支援は、十分な配慮が必要と再認識した。障害者に対応した施設はほとんどない中、こうした方々は体育館などでは避難所暮らしが困難で、保護者も連れて行きにくい状況。中には普段通い慣れているデーサービスに行く、という話も聞いている。当事者や保護者の皆さまの声をよく伺いながら、指定避難所に加えて特別養護老人ホームなど、民間のしっかりした福祉施設などとの協力協定締結も進めていきたい。

― その指定避難場所ですが、小学校の体育館空調設備の新設などが予定されています。

 臂市長 避難所の整備として重点的に取り組んでいく。2024年度は北・南・茂呂・三郷・宮郷・名和・豊受・北第2・広瀬・坂東・宮郷第2・境剛志・境東の13小学校で新設し、翌年度に残りの小学校を実施する。中学校は四ツ葉学園を含む全12校が既に工事を発注し、今夏には利用できる見通しだ。アイオーしんきん伊勢崎アリーナ(伊勢崎市民体育館)も新設する。また設備の更新は市図書館や障害者センター、殖蓮・赤堀・境東・境島村の4公民館を計画している。


― 災害時の情報発信の充実はどのように図っていますか。

 臂市長 総合防災マップは市のホームページでも公開しているが、新たにスマートフォーン向けWEB版を新年度中に作成、提供したい。災害時に現在地から近い避難所、周囲の河川のその時点の水位がわかるなど、災害に的確に対処できる情報を素早く、手軽に入手できるようにしていく。

 スマートフォーンを持たず、テレビ、ネット環境がない市民には、いせさきFMの割り込み放送の仕組みを利用し、災害発生時の市からの災害情報を速やかに届けたい。Jアラート(全国瞬時警報システム)の緊急地震速報や弾道ミサイル情報を受け、スイッチを切っていても自動でラジオが起動、災害情報を受信できる、FM自動起動ラジオの無償貸与を予算化した。避難行動要支援者名簿登録者を中心に2000台分を確保した。
 
 群馬県内で外国人居住者の多い伊勢崎市では、外国人に対しての情報発信も極めて重要だ。既存の総合防災マップに加えて、英語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語の4言語版を新たに作製し、関係各所に配布していく。

防災マップ
河川別浸水想定区域がわかる総合防災マップと4か国語の総合防災マップ

― 市民の防災意識を高めるための今後の取り組みは。

 臂市長 総合防災マップの解説動画を既にホームページに掲載している他、出前講座、災害図上訓練、避難所運営ゲームなどの開催で関心を高める取り組みを行ってきた。いせさき情報メール、SNSなどを通して引き続き防災意識の向上に努めていきたい。

 能登半島地震は昨年に続いて起きている。地震は時や地域を選ばず発生する、ということを前提に取り組む必要性を強く感じた。耐震などのハード面の整備とともに、高齢者などの社会的弱者をどのように助けるのかなど、日頃から近隣とのコミュニティーの重要性を訴えていきたい。(次回に続く)
                    1