【こながや まり】1985年12月、伊勢崎市下蓮町生まれ・境町在住。本庄第一高校、共愛学園前橋国際大学卒業。輸入通販会社に就職した2年後にアクセサリー・雑貨・小物類の通信販売業で起業。5年間経営した後は子育てに専念。
 2022年1月、子ども食堂「てんとうむし」(伊勢崎市新栄町4072−37 月〜金曜日午前11時30分〜午後2時/ラストオーダー13時30分)を開設。小5・小2の男児の母。
活動の原点はフードロス削減と自身の子育ての苦労が融合
子ども食堂「てんとうむし」代表 小長谷真里さん(2023年12月27日)
 子どもの居場所づくりや貧困対策として、子どもたちに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」。関係団体の直近調査(速報値)では、全国に9131か所と増加している。とはいえ運営形態はさまざま。店舗を確保し、子供には無料で毎日(平日、昼のみ)食事を提供している運営団体は少ない。広瀬小学校の西側、平屋建てでオレンジ色の下地に白抜きされた看板が際立つ店舗「子ども食堂 てんとうむし」は、そのひとつだ。

 2年前に開設したこの食堂は、子どもの居場所確保や孤食とフードロス削減のコミュニティの色合いが強いが、来店が困難だったり経済的困窮家庭の子供には個別に対応している。もともと大学時代からフードロスには強い関心を持っていた。やるべきことが明確になったのは、母親として2人の子育てに苦労したことが大きい。この2つが融合した。二男が小学校に入学し、少し手がかからなくなったのがタイミングとなった。この間、前橋の友人の子ども食堂を手伝ったことも決断を促した。

 「子育てに余裕がなく、自分の子はなかなか誉められなかった。向き合ってしっかり話を聞くことも少なかった」。その反省から来店する子どもたちへは、まず褒めることから始める。その上で気がついたことは注意し、必要に応じて叱る。特に挨拶は親よりもうるさく、時には喧嘩もする。だからこそ「信頼関係が築ける」と言葉に力がこもる。ただ、こうした人間関係が定着したのはここ1年のこと。「それまでは毎日が必至で、一番大変だった」と苦労を滲ませる。

 傷や不揃いで廃棄する野菜などは農家から。廃棄する前の食品や日用品は企業、贈答品や消費しきれない食品、日用品は一般家庭からの寄付で賄っている。これまでに築いた人脈に加えて、毎日の新たな出会いの中で、お手伝いなども含めて志に共感した協力者は増え続けている。留守をしている店の玄関前に、知らない人からの野菜が届けられたりもする。インスタグラムでは日々提供される寄付を報告し、感謝を伝えている。大人1食800円のランチ収入も運営を支えている。

 境、東、赤堀地区に、同様の子ども食堂開設が次の目標。「朝から夜の7時8時まで開きたい」の思いも強い。資金、人材も課題となるが「食堂で私の不在を知ると、寄ってこなくなる子どもが」と、直面する悩みも吐露する。取材は某日の午後2時から3時までの約1時間。この間に数人の子供たちが入れ代わり立ち代わり店を訪ずれ、店内で談笑していく。ハンドルとホイールを入れ替えた自転車を見てもらおうと駆け付けた子もいた。

 大学時代は飲食店や学習塾、吹奏楽指導とアルバイトを掛け持ち。当時のホリエモン(堀江貴文さん)に刺激を受けて始めた株式投資で毎日、日経新聞を読み込んだ。後の起業や子ども食堂の活動に繋がった。現在は月に一度、前橋へ写経に通い、心を整えている。子どもの送り迎えで一緒に通い始めたボクシング。釣りのため1級小型船舶操縦免許取得は2年前。大型二輪免許取得が2か月前。旺盛な行動力が人との出会いの連鎖を生み、子ども食堂の支援の輪を広げている。(廣瀬昭夫)