店内で常連客と寛ぐ、せっちゃん(加藤さん/左から2人目)と鳥居ディレクター

TV取材から約1年 人気グルメ番組で異例の2回放映「せっちゃんうどん」
店主とディレクター 今も続く「ばあちゃんと孫」の交流(2022年12月6日)

 住宅を少し改装した、低価格で豪華なおかずとボリューム満点の自家製手打ちうどんが評判の「せっちゃんうどん」(伊勢崎市安堀町、加藤節子店主 78歳)。地元常連客に愛される中、中京テレビ制作、日本テレビ系列放映の人気グルメ番組「ヒューマングルメンタリーオモウマい店」(2月22日・5月5日放映)で、さらに話題の行列店となった。気取らない世話好き店主の加藤さんと、入社3年目の若手、鳥居大雅ディレクターの「ばあちゃんと孫」の交流は、今も変わることなく続いている。

 「『今日、泊っていきます』って、近くに来た時には必ず寄っていく。たいちゃん(鳥居さんの愛称)、昨日も泊ってったよ」と、こともなげに語る加藤さん。11月中旬のある日、記者がランチに訪れた時の話だ。鳥居さんの父と祖母が、それぞれに名古屋から来店してくれたことも話題になった。祖母の時は、帰り際に知ることとなり店内は大慌て。奥から出てきた加藤さんが、鳥居さんに早速ラインで連絡。鳥居さんが「え〜っ」という、コミカルなやり取りも話してくれた。

 1月6日に伊勢崎市内をタクシーで取材店を探していた鳥居さん。「店主名が入っていることが、店探しのコツのひとつ」としてフラっと立ち寄り、翌日も訪ねている。構想を固めて12日から本格的な取材で訪れた5日間は、料理撮影のためのクルーは帰し、一人で取材を続けた。「家に泊まってきなよ」と迫る加藤さんに、根負けして2階に連泊。取材撮影を兼ねた家族同様の生活で「ばあちゃんと孫」の絆を深めていった。

 その様子が2月22日放映で描かれている。放映後の反響を見越して同番組ではスタッフが店の手伝いに入ることもあるという。待機していた鳥居さんも集まった常連さんたちと番組を鑑賞し、盛り上がった。当日は偶然にも鳥居さんの誕生日だったことから店がサプライズ誕生会を企画。盛りだくさんの料理と大量のプレゼントが贈られた。鳥居さんは取材協力のお礼のつもりで加藤さんへの帽子のプレゼントを用意していた。この様子が5月5日の2回目の放映で紹介されている。

 同番組の店探しは、ネット情報も参考にするが、基本は地域の口コミと現地踏査。店探しから取材交渉、密着取材まで、1週間以上時間をかけて、店や常連客、店主の人柄、魅力を丁寧に拾いあげていく。映像が収まりの良い部屋の片隅に、長時間にわたって無造作に置き、自動で撮り続けるハンディカメラ。この撮影が、店主や常連客の意外な素顔を捉えていく。カメラ設置を忘れていたかのように、家族同然に振る舞う鳥居さんの自然体の映像も、視聴者の共感を呼んでいた。

 「せっちゃんうどん」は鳥居さんが番組を担当して2本目の企画だった。テレビマンらしからぬ初々しい人懐っこさに溢れていた。若い来店客は全て孫にしている加藤さんだが、そんな鳥居さんをとりわけ可愛がっている。従業員の慰労を兼ねた、1泊2日のみなかみ温泉宿泊にも声を掛け、一緒に楽しんできた。会うたびに「彼女は出来たか」に続いて「出来たら連れてくんだよ」まで口にしている。ただ「結婚式には呼んどくれ」とまでは、踏み込んでいないようだ。(2022年12月6日)