【写真】2018年に廃刊した「いせさき新聞」(写真右下が最終号)

希薄だった活字文化支える市民性と企業風土
伊勢崎の地域新聞発行事情(2022年5月25日)

 「いせさき新聞」は、群馬県伊勢崎市内と隣接する玉村町内の読売新聞に折り込まれた週刊フリーペーパー(無料紙)。ブランケット版(一般新聞サイズ)4頁の発行で、1997年10月3日に創刊した。2012年から隔週刊となり、2018年8月17日で廃刊。21年間の発行だった。

 創刊前、同様のフリーペーパーが群馬県桐生市の「日刊きりゅう」、太田市で「太田タイムス」などが発行されていた。それぞれ桐生出身者が経営し、「いせさき新聞」も同様だった。活字文化に親しみ、それを支えようという気概と風土が残る桐生市。夕刊購読紙「桐生タイムス」(フリーペーパーわたらせも発行)は1945年の創刊以来、市民に親しまれ、「日刊きりゅう」も発行を続けている。

 いせさき新聞を印刷していたのは、その「日刊きりゅう」の輪転機だった。先行地域での事業成功と空白に見えた市場。その輪転機の空き時間を使って新市場に挑んだ。新聞業界は長年の地盤沈下に加えてインターネットの影響も手伝い、縮小傾向にあった。体力のある企業は電子化移行へ試行錯誤を続けている。

 「いせさき新聞」の廃刊は、それ以前の紙面充実と営業努力が要因だが、桐生市民のような活字文化を支える下地の希薄さも手伝っている。広告効果はさておき、新聞を応援しようというスポンサー企業も多くなかった。編集に関わった身としては、そんな愚痴をこぼしてみたくなる。「伊勢崎ニュース」(創刊時「WEBプレスいせさき」)は、その廃刊した「いせさき新聞」の編集者とホームページ担当者で運営している。