【写真】例会(公演)予定を紹介する坂本和枝事務局長(左)と事務局員の内山初江さん

劇団と演劇文化を守る誇り共有し会存続へ
コロナが会員減少に追い打ち いせさき演劇鑑賞会


 新型コロナウイルスの感染拡大が、市民の文化活動にも大きな影を落としている。いせさき演劇鑑賞会(小倉由美子代表幹事)は、会員の減少にギリギリの運営を余儀なくされている。会では「地元で演劇を観ることができる喜び、劇団とともに演劇文化を支えている誇り」(坂本和枝事務局長)を内外に呼びかけ、存続に奮闘している。群馬県内では3鑑賞会のうち前橋演劇鑑賞会が会員減少により、4月7日の最終公演で幕を下ろしている。

 1988年創立の「いせさき労演」(2001年、現名称に変更)は、翌年3333人の最大会員数を記録した。演劇文化活動が盛んな時代背景もあり、伊勢崎市文化会館を会場に年間8例会(公演)で、1例会3日間の3ステージをこなしたこともある。その後は娯楽の多様化、高齢化などで会員は減少の一途を辿っている。ただ低迷の中、ここ数年は400人前後で推移し、盛り返そうとしていた。その矢先、コロナが追い打ちをかけ、現在は300人を切っている。

 会員は月会費2800円で年6回、様々なジャンルの作品を鑑賞している。特徴は3人以上の会員でつくるサークルによる運営活動。各サークルが事前に希望例会(公演)を選び、劇団を迎え入れる準備から公演終了まで対応し交流を深めている。サークル活動を通した会員拡大は、運営の大きな柱。会員の入退会が日々続く中、前回例会より一人でも多い「前例会クリア」を会員に呼び掛けてきたが、達成できない例会が続いていた。

 全国には119(2020年8月現在)の演劇鑑賞団体が、12のブロックに分かれて活動している。いせさきが所属する関越ブロックは、高崎と埼玉県内の本庄、深谷、秩父の5団体で、劇団公演はブロックを中心に日程が組まれている。公演では関越ブロック作成のコロナ感染対策を徹底。会場換気、検温・手指消毒、密回避の入退場の工夫、終演後の座席消毒、劇団関係者の事前PCR検査など、安全・安心運営に取り組んでいる。

 全国連では昨年、苦境に立たされた劇団への全国連の連帯カンパを実施。いせさきでは昨年の8月例会会場で呼びかけた。全国の例会会場で集まったカンパの総計は3852万9234円で、28団体に各137万円を送っている。坂本事務局長は会存続に向けて、ある演劇代表者の言葉「演劇は舞台を重ね、客と交わることで成長する。演劇という文化の継承もできる。しっかりとした鑑賞組織があって、劇団の公演ツアーを可能にしていく」を紹介。会員は観劇にとどまらず「劇団を支え、演劇文化を守っているという誇り」をあらためて強調した。(2021年5月9日)