【写真】上:伊勢崎市庁舎の市長室で記者会見した、(右から)五十嵐市長、篠原監督、主演の山崎さん、原作者の横山さん。下:撮影に使われた伊勢崎市東本町の文具店

民家やアパート、風景など重要なシーンを伊勢崎市内で撮影
横山秀夫原作 映画「影踏み」監督や主演者ら伊勢崎市長表敬訪問

 群馬県内の全編ロケの中でも伊勢崎市内で多くの撮影が行われた、横山秀夫さん原作映画「影踏み」(篠原哲雄監督)の関係者が、11月の全国公開に先駆けて5日、五十嵐清隆伊勢崎市長を表敬訪問した。ミュージシャンで主演の山崎まさよしさん、篠原監督、横山さんらが、市や市民に感謝を述べるとともに映画の撮影秘話を語った。

 元上毛新聞記者で「クライマーズ・ハイ」「64」などで知られる横山さんは、警察目線の犯罪小説が多いが、「影踏み」は泥棒(作品では忍び込みのプロ“ノビ師”)が主人公という異色作。映画は謎解き犯罪ミステリーにとどまらない、奥深いヒューマンドラマが展開する。会見では山崎さんを犯罪者にしてしまったことを詫びる横山さんが「もう少し後なら一級建築士(現在のベストセラー『ノースライト』主人公)に」と笑わせた。

 篠原監督によると、伊勢崎市内では主人公が忍び込む民家や川の土手など、いずれも重要で印象的なシーンを撮影。「人々が、ごくごく普通に暮らす庶民的な雰囲気がいい」とロケ地選定の理由を説明。撮影に協力してくれた市民や関係者に感謝した。主演の山崎さんは保育所の撮影などの印象から「子育てしやすい地域では」と感想を語った。伊勢崎市の主要施策ともなっている「子育て環境の充実」の指摘に、五十嵐市長は満足そうに頷いていた。

 伊勢崎市文化観光課の要請を受けて、市内で民間の撮影候補地探しに奔走したのは、「いせさきフィルムコミッション応援団」(五十嵐均団長)。主人公の山崎さんが忍び込む一般的な民家や豪邸、小野真千子さん演じる主人公の恋人が暮らすアパート(三光町)、うらぶれた文具店という設定の文具のシマ(東本町)など、いずれも数ヵ所を提案したという。文具店店主は滝藤賢一さんが演じている。市施設ではで第三保育所(昭和町)、いせさき聖苑(波志江町)などで撮影した。

 五十嵐市長も元上毛新聞記者で、横山さんとは旧知の仲。1987年発生の功明ちゃん誘拐殺人事件では、市長が群馬県警のキャップで、横山さんがサブキャップを務めた。「あの時、私の忠告を聞いていたら、今の横山さんはなかったかもしれない」と五十嵐市長が自虐的に明かしたのは、横山さんが作家になるために、あえて会社を辞めようという時「大変だから会社に残って作家を目指したら」というアドバイスだった。

 同映画は伊参スタジオ映画祭などでつくる「影踏み」製作委員会が製作。篠原監督が22年前に同スタジオで撮影した「月とキャベツ」で山崎さんを主演に起用した縁で、再びタッグを組んだ。(2019年6月5日)